驚きの“公約”も飛び出した、大混乱の和歌山選挙区

いっぽう、選挙区の戦いに目を向けると、一時は歴代最長の自民幹事長として権勢をふるった二階俊博氏の地盤を次いだ、三男の伸康氏が“保守分裂”の構図での厳しい戦いを強いられている。

目下のライバルは、「公認」の座を巡って争い、たもとを分かって無所属で出馬した望月良男氏(元和歌山県有田市長)だ。

望月氏は長年、「保守王国」和歌山で、二階氏と緊張関係にあった世耕弘成氏と近く、選挙戦は「二階ジュニアvs世耕側近」という代理戦争の様相も呈している。

「序盤は伸康氏が順調にリードを広げていましたが、望月氏が猛追。伸康氏は昨年10月の衆院選で比例復活もできない大惨敗を喫しており、今回も落選すれば政治の道は絶たれかねない。陣営は焦りを募らせています」(全国紙政治部記者)

望月良男氏(本人事務所Xより)
望月良男氏(本人事務所Xより)

危機感の表れなのか、公示に先立つ6月30日に和歌山で行われた候補者討論会では驚きの“公約”も飛び出した。

「パンダがいなくなって不安を感じている県民もいる。その声に寄り添っていきたい」

伸康氏が持ち出したのは、6月に中国に返還された、和歌山県白浜町のレジャー施設「アドベンチャーワールド」で飼育されていた4頭のパンダのことだった。

日中友好議連の会長も務めるなど、党内きっての「親中派」で知られる父の俊博氏も誘致に尽力したとされるパンダの“奪還”を宣言したわけだが、この発言は、大きな話題となると同時に波紋も広げた。

パンダ(PhotoAC)
パンダ(PhotoAC)

では、渦中の選挙区の情勢はどうなっているのか。

「どちらが勝つかはまだ正直わかりませんが、街頭演説の人の集まりは良好といえます。平日とはいえ人口10000人に満たない小さな町でも100人以上、20000人の町では200人以上は集まって話を聞いてくれていました」

こう手応えを口にするのは、伸康氏の陣営に立つ現役の自民県議だ。

「自民党県議団はみな二階伸康を応援していますよ。衆院選の後、年末にはわざわざ事務所までご本人から自身の不倫報道について説明と謝罪がありました。

過去には田中角栄元総理のように政策や政治力で国のために良いことをしていれば、プライベートはどうでもいいという風潮がありましたが、現在は“クリーンなイメージ”が必要とされる時代ですので、和歌山を代表する議員になるためには聖人君子とは言わずとも心の弱さや甘さに打ち勝って欲しいと伝えましたよ」

二階伸康氏
二階伸康氏

県議が言及したのは、衆院選直後の2024年12月に週刊誌が報じた銀座ママとの不倫騒動のことである。

伸康氏は同誌の直撃を受けて不倫を認めた上で、「妻とは離婚協議の最終調整中」と発言し、党内外でひんしゅくを買った。県議の弁によれば、騒動については本人のみならず、後見役の二階俊博氏も支持者に頭を下げたのだという。

「お父様にも(今回の)選挙期間中にお会いしましたが、平身低頭で『みなさん応援のほどよろしくお願いいたします』と言われました。不倫の件については何もおっしゃっていませんでした。我々としても、有権者の皆様としても、いかに有力な議員を国会に送り出せるかが和歌山全体の発展に大きく関わるので、ぜひ頑張ってほしいと思います」(前出の県議)