ウンコで経済が回る

湯澤規子(以下、湯澤) 経済とウンコがつながっているっていうことは、業界の人は知ってるけど、普通の人はあんまり知らない。それを『ウンコノミクス』は余すことなく、アクセスできるところは全て見てきたっていう感じがして、すごく面白かったですね。

山口亮子(以下、山口) ありがとうございます。ウンコと経済を扱った本もありますが、わりとトイレに注目しているんです。私の場合はトイレよりも、そこを流れていくモノがどうなるか書きたいと考えました。

湯澤 そもそも、この『ウンコノミクス』というタイトルは、どうやって決めたんですか?

山口 ここにいらっしゃる編集者の田中伊織さんに、私がいくつか提案した中の一つです。田中さんが「これで行きましょう!」と、即決してくれました。

田中伊織(以下、田中) これしか提案されていない気がするんですけど……。

山口 そうですか? タイトルを考えたときに、何十個か案を書き出して、そのいくつかを田中さんに提案したような……。ウンコとエコノミクス(経済)の掛け合わせで、語呂が良かったので、自分でも気に入ってたんです。でも、ちょっとふざけてるかもと不安だったので、田中さんに背中を押してもらえました。

田中 これしか眼中になかったのかもしれません(笑)。

ジャーナリストの山口亮子氏(写真左)と、法政大学の湯澤規子教授(写真右)
ジャーナリストの山口亮子氏(写真左)と、法政大学の湯澤規子教授(写真右)
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湯澤 このタイトルは本当に秀逸だと思いました。

どんなに良いことでも、経済が回らないと、前に進まないじゃないですか。日本でも、肥料や燃料、空調にも使えるウンコを資源にする方が環境にいいと分かっている。でも、ちょっとキワモノと思われることが多い。この本ではウンコが生活をこんなふうに下支えしているとか、うまくすれば経済を回せそうだといった話を丁寧に追っています。

こういう情報が知られていけば、日本の社会も変わっていきそうです。トイレがつながっている下水道は、社会インフラというイメージが強い分、ビジネスになるんだ、お金になるんだという感覚が希薄です。

物事を進めるときに、名前って大事ですよね。このウンコノミクスみたいな言葉が、広がっていくといいなと思います。

山口 実はウンコはこのぐらい価値があるんですよと言えたら、もっと利用が進むんじゃないかという思いがあります。

湯澤 ウンコは安定資源だって話が出てきますね。量が変わらないって大事です。世界に目を向けると、資源は限られているのに人口が増えていく問題があります。その点、ウンコは人口が増えるほど増えていく資源ですよね。