公営プールでトラブルも…
“キャンセル待ち”で順番がまわってこない前出のAさんは、6月から近所の区民プールで我が子に水泳を教えるようになった。水泳経験があるわけでないが、自身の子どもの頃の記憶とYouTubeで「なんとかなっている」と話す。だが、新たな“問題”もあるという。
「都内のプール“あるある”だと思うのですが、子どもが泳ぐレーンと歩くレーンが一緒なんですよね。だから、そこを高齢者のかたが占拠してて、子どもが泳げる状況じゃないんですよ(苦笑)。バタ足でもしようものなら、凄い形相でにらまれるので…」
新宿区の公営プールに通わせる4年生1年生の子どもを持つ父親(40代)も我が子の“プールトラブル”について語った。
「ウチの子は息継ぎが下手くそだから、10メートルも泳げない。初心者専用レーンで練習をするんですが、常連の高齢者のかたが本当にイヤそうな顔するんですよね。なかなか前に進まないと露骨に舌打ちされました。初心者で真っすぐ泳げないから係員さんにもけっこう怒られてしまうし、でもプール教室は空いてない。迷惑がかからないよう毎回閉館ギリギリの30分だけ利用しています」
スポーツ庁が公表した「令和3年度体育・スポーツ施設現況調査の中間報告」によれば、全国の小中学校のプール施設数は約22,036か所となった。25年前の1996年に比べると約6千か所減少しているという。公営プールも1996年から約4割減の3,914か所となっている。この現状を受け、前出の山本氏はこう締めくくった。
「学校と公営のプールを一体的に捉えながら、学校施設の外部化も図りつつ児童の教育機会を損ねないように留意する必要があると思います。プールは重力から解放される場だと考えています。それは児童だけでなく、ご老人はもちろんすべての方の健康維持や癒しの場、『みんなのための施設』として計画的かつ実効的なプール整備が進んでいくことに期待したいです」
山本氏の言うとおり公営プールは決して子どもたちのためだけのプールではない。だが。学校でも民間教室でも練習ができない子どもたちはどこで泳ぎを習うのか。計画的なプール授業改革が行なわれることを願いたい。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班