「学校の授業だけじゃ練習しても絶対泳げないですよ」

子どもの居場所と学びの変化などの状況を追うノンフィクションライターのなかのかおり氏は小中学校のプール授業の現状についてこう話す。

「まず全国の小中学校のプールはほとんどが屋外にあり、(これまでは)雨の日などは水温が低いため授業ができないことがありましたが、最近では温暖化の影響から『熱中症警戒アラート』が発令され、暑すぎてプールが使用できないということもよくある。老朽化したプール施設を修繕するのに、お金がかかりすぎるため、学校の水泳授業を廃止した自治体もあります。

そしてコロナ禍に水泳授業ができなかったこと、また近年、教員の働き方改革が進んでいることもあり、学校の水泳授業がそもそも少なくなっている現状にあります」

写真はイメージです(PhotoAC)
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そうした動きの中で、小中学校側が現在取っている対策は、①学校プールの拠点化・共同利用、②民間プールの活用、③水泳の実技授業の取りやめという3つの動きなのだという。日本プール利用推進協会の代表理事・山本彩海氏に聞いた。

「①は屋内プールなどを備える小中学校を近隣の小中学校が共同利用するパターン、②は民間プールへの委託で、水泳の授業を継続していく対応なのですが、最悪の場合は③のように水泳の実技授業を廃止し座学のみにする自治体が増えています。

しかし、水泳に関しては水に慣れ親しみ、水難事故にあった際の『仰向けで浮いて待つ』ことなどを体感するのが大事だと思います」

写真はイメージです(PhotoAC)
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小中学生の子どもを持つ親たちは学校のプール授業のこのような変化をどう捉えているのか。豊島区内の公立小学校2年生の子供を持つ40代のAさんはこう嘆いた。

「学校の授業だけじゃ練習しても絶対泳げないですよ。息子に聞いたらクラスの半分以上が泳げないみたいです。プールや海の事故をニュースでみるとやっぱ怖いですからね。それにスイミングスクールに通わせたくても予約もとれない状況で30人の“キャンセル待ち”の状況です」

Aさんのようにスイミングスクールに通わせる親は多いという。都内各地のスイミングスクールでも「キャンセル待ち」や「満員状態」の所は多かった。なかには「2年待ち」を経験した保護者もいた。練馬区のスポーツクラブのスタッフは言う。

「学生対象クラスは平日夕方の1クラス40人〜50人が常時利用しています。土日は現状キャンセル待ちのクラスもあります。最も人数が多いのが土曜日午前の70人のクラスですが常時満員です。住宅街ということもありますが、ここまで利用者が増えたことの背景にはプールの授業の減少があるとみています。保護者や生徒の話では学校のプールの授業は年々減っているようですし」

写真はイメージです(PhotoAC)
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新宿区のスイミングスクールも「小学生のお子様は徐々に増えています。大体1クラス10人前後、多いクラスでは20人ほどでやっています」と言い、中野区のスイミングスクールスタッフも「曜日とコースによって人数のばらつきはありますが、基本10人から20人程度で常時定員に達しています」とのことだった。