異色の漫画家の原点は2000本のビデオ
――昨年10月に「少年ジャンプ+」でスタートした『筋肉島』は、己の肉体を突き詰め、筋肉のみで発展した島が舞台となる、かなり個性的な作品です。作者としてはどんなジャンルの漫画と捉えていますか?
成田(以下同) なんだろう……マッスルアクションストーリーみたいな感じですかね(笑)。シュールな部分や独特な世界観をさらっと流しながら、結果的にギャグになればいいなとは思っています。
そこは狙っている部分でもあるので、あえてツッコミもあまり入れていません。みんな、筋肉で頭飛んじゃっていてもいいかなって(笑)
――描くときに意識していることはありますか?
ガチのマッチョたちから「バカにすんじゃねぇよ!」と思われないように真摯に描こうと思ってます。 例えば、減量ひとつとっても、糖質を省く、脂質を省くなど、いろいろなパターンがあるわけです。それなのに「〇〇が事実で、これ以外はすべて間違い」と言ってしまうと、それが間違いになってしまいます。
最低でも「そういうやり方もあるよね」ぐらいのものを事実として提供できればなという気持ちですね。まあ、あの島の人たちはいきすぎちゃってる設定なので、実際そんな(重量)上がるかよみたいなところはあったりするんですけど(笑)
――成田さんのデビュー作でもある、チートデイをテーマにした『マッチョグルメ』(2017)にも「チートデイなんて必要ない」というライバルキャラを登場させて、両者の考え方の違いを描いてましたよね。
そうですね。それぞれのマッチョへの突き詰め方があっていいと思うんです。あのライバルキャラはフランク・ゼーンという実在のボディビルダーの人をモデルにしているんですが、ざっくりいうとアーノルド・シュワルツェネッガーの前にボディビル界で天下を獲った人。
今80歳くらいですが、当時はチートデイなんてやってなかったと思うし、今とは違う鍛え方をしてたんじゃないかと思います。それでも、その肉体はギリシャ彫刻みたいに美しくて、すごく好きな選手だったので描かせていただきました。
ちなみに、シュワちゃんもめっちゃ好きです。私はビデオが2000本ぐらいあるような家で育ったんですが、『ターミネーター』や『コナン・ザ・グレート』を観て、子供ながらに「こんなかっこいい人間がいるんだ!」と思ってました。あまり意識したことなかったけど、もしかしたら筋肉との出会いはそこだったのかもしれません。