「牛肉は高いから安いひき肉に豆腐を混ぜてかさ増しして…」
様々な試行錯誤のうえ子供たちの前に並んでいる給食だが、福岡市だけでなくそれは他県でも同様だ。埼玉県川口市の担当職員が語る。
「基本どの自治体も自治体職員だけでなく学校関係者などが意見を出し合って食材を選んでいます。川口市ではこれまでは県内産のコメである『彩のかがやき』を使っていましたが、コメの高騰にともない青森県産の『まっしぐら』に変えたり、牛肉は高いので豚肉や鶏肉の割合を増やしたりしていますし、肉の部位を変更したりしています。限られた予算の中で『味・価格・見た目』に気を遣っています」
また、都内23区内のある役所の担当職員も給食の質を落とさないよう奮闘していると語った。
「給食の無償化が始まりましたが、それに伴い予算がついているので献立が著しく変わるといったことは起きていません。とはいえ、物価高のあおりは給食現場も受けています。ジャガイモが高い時は、かぼちゃなどの別の食材にし栄養を補う工夫をしております。『栄養バランスがとれていて、子供たちが美味しく食べられること』を最優先に現場は動いています」
長年、関東近郊の私立幼稚園や小学校で給食調理員として勤務してきた40代女性は今回の唐揚げ給食騒動について同情を寄せた。
「ネットの批判を見て本当に気の毒だと思ったよね。60グラムの大きいお肉だし、あんなもんだよ。今は物価高で色々苦労があるのは事実。私の担当している学校も今まで使っていたコシヒカリからそれより安い他県産のブランド米に変えた。古古米とかは使わないかな。使ったら保護者(モンペ)のクレームも怖いしね。
デザートについても本当はメロンやスイカなどの季節の食材を使いたいけど、でも使ったら確実に予算オーバー。だからバナナやゼリー、寒天などが多くなる。魚についてもサケとかもっと使ってあげたいけど、サバが多くなってる。サンマなんか高すぎて今じゃ出せても身が細すぎてカバ焼きとか無理だし、めったに出せない。
お肉だってそう。牛肉は高いから安いひき肉に豆腐を混ぜてかさ増しして豆腐ハンバーグにしたり。今回の唐揚げで言えば揚げると縮むわけだからチキンカツにするという方法もある。
悪い油を使わないよう気を遣わないといけないし、予算内でできる限りのことをしているのが給食。正直、今回の唐揚げのメニューについては栄養価を満たしているなら昔からあるレベルの献立だと思う」
物価高騰の中、給食現場の人たちはギリギリの予算でよりよい給食を作ろうとしている。全国的に急拡大している給食無償化など給食を取り巻く環境がめまぐるしく変化しているが、子どもたちが献立を見るのが楽しみになるような給食が届けられることを願わずにはいられない。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班