歌舞伎町のホストは「いきなり接客スタイルを変えるのは違和感ある」 

6月某日、週末の歌舞伎町で取材班は50人近いホストに声をかけた。しかし、「チッ」と舌打ちして足早に立ち去る者や、「店にも関わることなんで、なんも言えないです」と取材を断る者がほとんどで、いずれも口は堅かった。

そんな中、唯一取材に応じてくれたのは、某大手グループ店に所属する20代のホストだった。彼は次のように語る。

「“色恋禁止”ってワードだけが一人歩きしていて、条文の意味が正確に伝わってないですよね。今回の改正法は、完全に色恋禁止なわけじゃない。なので、うちの店では上から『色恋感情を利用して脅したり、“タワーしないなら関係切るよ”みたいなことを言ったりするのはダメ』って言われました。

でも実際、僕らって女の子たちの応援で成り立ってる仕事じゃないですか。だから、いきなり接客スタイルを変えるのも、逆に違和感あるんですよね」(20代男性)

次に話を聞いたのは、歌舞伎町を中心に全国30店舗を展開する大手ホストグループ「冬月グループ」の冬月本店初代No.1で、現在は同グループの副社長を務める「みとなつ」氏だ。

みとなつ氏
みとなつ氏

みとなつ氏といえば、昨年12月に改正案が国会に提出された際、自身のX(旧Twitter)で「アホかこいつら。じゃあホストもキャバ嬢も誰ともデートもセックスも出来ないね」と怒りをあらわにして話題となった人物だ。彼は現在、従業員たちに対してどのような指導を行なっているのだろうか。

みとなつ氏によれば、「法案成立以降、特に何か(お店のホストに)注意喚起をしたわけではない」という。

「ただし、当然ながら暴力や恐喝行為がないよう、引き続き指導は徹底しています。また、結婚詐欺にあたるような発言については注意喚起していますが、そもそもそこまで手の込んだ営業をしているホストは、歌舞伎町でもあまりいないと思います。

ホストとお客様の間にある恋愛感情や恋愛関係は、切っても切り離せないもので、男女である以上、完全になくなることはありません。『それが本当の恋愛感情なのか、それとも詐欺なのか』という区分は、結局のところ、当人の心の中をのぞいてみない限りわからない。だから、判別は不可能だと思っています。なので、実際には誰もそこまで気にしていないし、注意のしようもないんですよね」(みとなつ氏)

数多くのホストクラブがある新宿・歌舞伎町(写真/集英社オンライン)
数多くのホストクラブがある新宿・歌舞伎町(写真/集英社オンライン)

今回の法改正は、「色恋営業そのものを禁じる」というものではない。

問題視されているのは、客の感情に乗じて不当な働きかけを行なう行為であり、たとえば「客が飲食をしないと、キャストとの関係が破綻することになると告げること」や、「キャストが降格や不利益を被らないためには、その客の飲食が不可欠であると告げること」などが該当する。

とはいえ、疑似恋愛的な関係が生まれたり、性的な一線を越えたりしたあとに、ホストから売上を理由に関係の破綻をほのめかされれば、多くの女性客は「応援しなければ」という心理に追い込まれてしまう可能性がある。

みとなつ氏は、そのあたりの定義をどう考えているのだろうか。

「性的な一線を越えるかどうかも含めて、すべては個人の自由だと思います。だからこそ、今後もそうした関係がなくなることはないし、それを一律に注意するような(ホストクラブの)グループも現れないでしょう。

ただし、私個人としては、結婚をほのめかしその感情を利用するような営業や、強引な会計へと誘導するような明らかに悪質な行為については、決して行なわないよう徹底的に指導していきます」(みとなつ氏)

みとなつ氏
みとなつ氏