色恋営業の禁止の実態
――5月20日に可決された「風営法の改正」は、ナイトビジネスの健全化につながりますか?
若林翔(以下同) 悪質ホスト問題に端を発した「色恋営業の禁止」は、ホスト業界にかなりのインパクトを与えると思いますが、イメージ先行で、条文の意味が正確に伝わっているのかどうかは疑わしいですね。
――そもそも「色恋営業」とはどういった営業スタイル?
熱心にホストクラブに通う客は、自分が指名する担当ホストのことをしばしば『私の彼(氏)と言い、こうした「ホストと客の状態」は、ホスト業界において『本営』と呼ばれます。「本彼女営業」を縮めた隠語です。
――その『本営』が、つまり「色恋営業」ですか。
いいえ、そうではありません。本営は、ホストと客の間に「交際関係」がある場合の隠語です。「色恋営業」はどちらかといえば、本営の「手前のイメージ」。つまり、ホストが客に対して恋愛感情を持っているかのように装い、客と「疑似恋愛している」(客の側は本物の恋愛だと錯誤している)状態を提供する営業方法のことです。
――改正された風営法では、今おっしゃったような営業方法が禁止された?
そこが誤解されているところで、法的には「こうした状態」を作り出すこと自体は禁じられていません。このような色恋営業の状態を利用して、ホスト側が「関係の破綻」や「不利益」を告げて、客を「困惑」させ、それによって遊興や飲食をさせることが禁止されたのです。
ガイドラインの線引き
――具体的な事例としては、どういった行為が考えられますか。
シャンパンを入れてくれなかったらもう付き合えない、とか。この売上を達成しないと、ホストとして降格してしまう、とか。そうした表現は「関係の破綻」や「不利益」を告げて、客を「困惑」させていることになると考えられます。
――逆に、改正された風営法でも「OKな表現」はどうですか。
条文を読むかぎり、たとえば「おれはナンバーワンを目指しているんだ(だから、応援してほしい)」は違法とはされないでしょう。同じナンバーワンというフレーズを使っても、「締め日に来て、タワーをしてくれないとナンバーワンになれない。そうなったら別れるしかない」はダメですね。
――違反してしまった場合、ホストたちにはどのような罰が?
ホスト個人に対する罰はなく、そのホストが勤務するホストクラブに対する「行政処分」が行なわれます。簡単にいえば「連帯責任」ですね。ひとりのホストが違反をするだけで、(風営法の)1号許可を得て営業しているそのホストクラブ自体が「指示処分」や「営業停止」、「許可の取り消し」を受けてしまいます。