昨年の総裁選時と重なって見える? 

「担当大臣としてしっかりと、国民の皆さんが、昨年と比べたら2倍近くになっている米の価格が下がったと。これだったら安心してお米を買える、食べると。(中略)しっかりと米の価格が下がるという、そういった方向性に向けた第一歩を示していきたいと思っています」

5月21日の就任会見でこう語った小泉進次郎氏。失言により江藤拓・前農水相(64)が辞任し、緊急登板したが、参院選を前に深刻な支持率低迷にあえぐ石破政権の命運を握っているといえる。

5月21日に農林水産大臣に就任した小泉進次郎氏(本人Xより)
5月21日に農林水産大臣に就任した小泉進次郎氏(本人Xより)
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全国のスーパーでは、コメの価格が5キロあたり4000円台まで高騰。焦りを募らせる石破茂総理(68)は、5月21日の党首討論で「(5キロあたり)3000円台にしなければならない」と語った。

参院選を前に、コメの価格高騰を一定程度落ち着かせ、なんとか政権浮揚の材料にしたいのだろう。

小泉氏も就任会見で「総理の思いも確認をしながら、3000円台ということの思いを私としても、共有をしながら農政を進めていきたい」と、コメ価格の大幅な引き下げに意欲を示した。

石破総理の指示のもと、小泉氏が描いたシナリオはこうだ。

備蓄米の放出を、従来の入札方式から、国が事前に価格を決め、任意に受注者を選んで契約する随意契約に転換する。これにより、5キロあたり約2000円の備蓄米を店頭に並べることを実現させ、「価格破壊」を起こす——。

小泉氏はすぐさま大手小売業者を対象に合計30万トン(21年産が10万トン、22年産が20万トン)の購入申請の受付を開始し、約70社の応募が殺到した(22年産に人気が集中し、上限を超えてしまったため、現在は受付を一時停止)。

備蓄米の随意契約の申し込み社数などを発表する小泉氏(本人Xより)
備蓄米の随意契約の申し込み社数などを発表する小泉氏(本人Xより)

ところが、自民党内には当初から、小泉氏の取り組みを冷ややかな目で見る向きもあった。

「進次郎の“いつものパターン”にならないといいが……」

そう漏らしたのは、自民党の重要閣僚経験者だ。小泉氏の就任会見での言動が、「昨年の総裁選時と重なって見えた」と打ち明ける。

「進次郎氏は総裁選の出馬会見で、解雇規制の緩和やライドシェア解禁、選択的夫婦別姓などを1年以内に実現させるとぶち上げた。しかし、言ったはいいものの、なぜそれが1年以内に実現可能なのかという根拠には乏しかった。

案の定、他の候補者との論戦が進む中で、どんどん疑問符がついていき、進次郎は失速した。はじめに勢いのよすぎる発言をしたことで、あとで追い込まれてしまったのです」

今回のコメ価格の引き下げ問題についても、同様のパターンになるのではないか、と見ているという。

「当初の決意通りに、コメ価格全体の引き下げにつながれば、参院選を前に、石破政権の大きな実績になる。進次郎氏としても、次の総理候補として名をあげるチャンスになります。その反面、期待外れに終わった時の国民の落胆は小さくない。まさにイチかバチかです」(同前)