保護者からのクレームにも繋がる
たとえば、美術、家庭科、技術など、授業時数が少ない技能教科の先生が、臨時で英語や数学を教えるなんてこともあります。これは20年以上前からありましたし、もちろん今でも日常的にあることです。
本来、授業というのは、教員免許を持った教員が行わなければいけないものです。
でも、免許外教科担任として認められた教師が授業をすることで、生徒はその教科のカリキュラムを履修したことにされてしまいます。
ただしその授業の質は、まったく保証されていません。教育委員会は、申請書類のチェックはしますが、その授業の質のチェックはしないからです。
そもそも臨時の先生は、その教科の専門性なんてまったくないのです。もしかしたら、近所のおじさんが趣味で教えているのと、同じようなレベルかもしれないのに……。それでもこの制度を使うことで、その教科をちゃんと履修しましたということになってしまうのです。
でも、教員の立場からすると、臨時で授業をさせられる側も大変なんですよ……。だって専門でもなんでもない教科を教えるんですから。授業の準備や計画もすべてゼロからです。
何をどう教えればいいのかもわかりません。右も左もわからない中で、毎時間のプリントをつくったり、テストを作ったりするんですよ?自分の本来の教科の準備よりも、よっぽど時間がかかります。
マジメにがんばってやろうとする先生はまだ良い方で、中には手を抜いて毎回、ワークブックをやらせるだけとか、動画を見せるだけで乗り切っている先生もいることでしょう。
そしてその一番の被害者は生徒ですよね。ちゃんとした授業が受けられないんですから。
教育を受ける権利というのは日本国憲法で保障されている権利です。
生徒には教育を受ける権利があります。だから、国や自治体は責任を持って、教育を受ける機会を、平等に提供しなければいけないはずです。
専門の先生から教えてもらえる生徒と、専門の先生がいない生徒。明らかに平等じゃありません。
実際、免許外の先生が英語を教えたりすると、「2組の先生は専門じゃないからちゃんと教えてくれない。うちの子のクラスは他のクラスより平均点が低い」と保護者からクレームが来ることも、けっこうあるんです。
教育委員会も学校も、こういう状況を知りながら、ずっと前からなんとか誤魔化しながらやりすごしている。それがずっと続いている教員不足の現状なのです。
写真はすべてイメージです 写真/Shutterstock