取っ組み合いの喧嘩が名物だった人気ドラマ
台東区谷中にある石屋「寺内石材店」を中心に、三代目の寺内貫太郎一家と職人さん、近隣の人々との触れ合いが描かれるファミリー喜劇である。
原案と脚本は向田邦子、演出とプロデュースが久世光彦。平均視聴率31.3%を獲得したほか、その斬新な内容で1974年第7回テレビ大賞を受賞している。
登場人物は貫太郎(小林亜星)を支える妻の里子(加藤治子)、沢田研二のポスターの前で身悶えながら「ジュリ~!」と叫ぶ母のきん(樹木希林)、父の仕事場で起きた事故で足が不自由になった長女の静江(梶芽衣子)、静江の恋人で妻と別れたばかりの上条(藤竜也)、住み込みのお手伝い相馬美代子(浅田美代子)、それに石工職人の岩さん・タメさん(伴淳三郎・左とん平)など多彩な顔ぶれだった。
着流し姿のヤクザくずれを演じたイラストレーターの横尾忠則、越路吹雪のプロデューサーだった東芝レコードの渋谷森久など、演技の素人が平気で登場するユニークな演出も話題になった。
久世光彦に抜擢された作曲家の小林亜星は、まったくの素人だったが、巨漢であることと同時に、本物の表現者だけが持っている存在感によって、堂々たる主役を演じて成功した。
昔気質で頑固で短気、しかもシャイで口下手という設定だから、貫太郎は家族にも手が先に出て、すぐ親子喧嘩になってしまう。
体重が110キロを超える巨漢の小林亜星と、息子役として共演した西城秀樹の出演シーンは、取っ組み合いの喧嘩が名物となった。
何かの拍子に言い争いが始めるとその場で立ち上がった両者がもみ合いになり、タンスは壊す、障子を突き破る、壁にぶつかれば額が落ちてくる、庭に投げ飛ばされるという、激しいアクションが繰り広げられたのだ。