「ガンダムの主題歌をやってくれないか?」
そこに巻き込まれた家族が喧嘩の合間に細かなギャグを見せるという、それまでにない破天荒なホームドラマは、高視聴率だったことで、翌年も続編の『寺内貫太郎一家2』が製作された。
打ち身や擦り傷は日常茶飯事の西城秀樹だったが、続編の初回では小林亜星に投げ飛ばされて、右腕を骨折するというアクシデントも起こった。
そうした共演から四半世紀を経て、小林亜星は本来の音楽というフィールドで西城秀樹に歌ってもらうために、ベストを尽くして曲を作ったという。

その話を切り出されたときのことを、西城秀樹がこのように語っていた。
舞台をはじめる直前、食事をしているときに「ガンダムの主題歌をやってくれないか?」と。そのときは、まだ曲も完成していないし、僕自身、「ガンダム」という作品を知っていたが観たことはなかった。それで映画版の最初の「ガンダム」を観て、「メッセージ性の強い、ヒューマンな話だな」と思いまして、やらせていただくことに。
しかし、詞を初めて見せてもらって、テーマが大きな愛だということがわかった後も、「ターンAターン」という言葉が西城秀樹には、どこかしらきちんと理解できていないところがあったという。
それで録音のときに富野監督に聞いたら、2時間かけて話してくれましてね(笑)。とっても熱くて、純粋な方です、監督は。監督のおっしゃった「ターンAターン」っていうのは、簡単に言うと「人は生まれ変わる。生きて死んで、それを繰り返すことによって自分の首を締めている現代というものがある。だが、そうではなく最初に戻るんだ」とのことでした。
こうして富野監督の言葉を理解したうえで、本番のレコーディングが行われたのだった。
小林亜星は2018年5月の読売新聞で、このような胸の内を吐露していた。
彼は完璧に理解して、完璧に歌ってくれた。音楽を通じて理解し合いました。僕が作ったアニメの曲では一番だと思う。
それは西城秀樹の訃報が流れた直後のことであった。
文/佐藤剛 編集/TAP the POP
引用/西条秀樹の発言は『∀ガンダム フィルムブック[1]』(角川書店)より