不本意な非正規労働者の割合は、実は他世代よりも低い
石破首相は4月19日に、若者支援に力を入れる「たちかわ若者サポートステーション」を視察し、就職氷河期世代を含む人々と対話を行なった。政府として氷河期世代の支援を強化する姿勢を、世間にアピールしている。
就職氷河期世代は、バブル崩壊後の1990年代前半から2000年代はじめにかけて学校を卒業した世代を指す。年齢にすると、30代後半から50代前半だ。1700万人以上いるといわれている。
大卒の求人倍率は1990年の2.77から2000年には0.99に低下、就職率は1997年(調査開始年)の94.5%から91.1%まで落ち込んだ。名のある大学に在籍していても、100を超えるエントリーシートを応募して、面接に進めればいいほうだった。この世代は正社員として働けるだけでも御の字だという意識が強く、やりがい搾取と呼ばれる“ブラック企業”体質を作る温床にもなったといわれている。
氷河期世代は非正規雇用の割合の高さが取り沙汰され、恵まれない世代の象徴的な存在と見られている。しかし、状況は好転した。
内閣府の「就職氷河期世代の就業等の実態や意識に関する調査」によると、45歳〜54歳までの大卒者の不本意な非正規雇用労働者の割合は30.2%だ。他世代では35歳〜44歳が37.7%、25歳〜34歳が37.8%である。調査した全年代の平均は35.2%であり、氷河期世代ど真ん中の45歳〜54歳は明らかに比率が低い。
また、45歳〜54歳における正規雇用労働者の25.1%は、従業員1000人以上の規模の大企業である。全世代の平均が24.0%なので、氷河期世代だけが特別低いわけでもない。
もちろん、支援が必要な人がいるのは確かだ。しかし、氷河期世代は悲惨さが染みついて今も報われないイメージが色濃く残っているが、見かけよりも雇用環境は悪くはないのだ。
2022年度の「氷河期世代支援予算」は207億円にものぼる。ここから支援をさらに強化し、50代に差しかかる人たちに“学び直し”の機会を提供したとして、どれほどの効果が出るだろうか。
しかも、政府は2019年に氷河期世代の正規雇用者30万人増を目標に掲げたが、その実績はわずか3分の1だった。支援を強化して数字を伸ばすことが本当にできるのだろうか。