信じがたい光景──線路に置かれた“10円玉”
「電車が止まるたびに100人近くの観光客が降りてきて、踏切が一気に人であふれます。その影響で車が通れなくなり、タクシーの運転手がイライラして、バンバンとクラクションを鳴らしまくったり……。あと警備員の方も、人によっては強めの口調で怒鳴っている姿を見かけます」
なぜこの踏切がここまで混雑するのか。住民によると、日本の交通ルールが外国人観光客に浸透していないことも要因の一つだという。
「観光ツアーのガイドさんも外国人だったりすることが多いんですが、歩行者が右側通行だって知らない人が多くて、来る側と帰る側の団体がすれ違いざまにぶつかってしまうんです。それがさらに渋滞を引き起こすんですよ。そこにさらに車も通るので、運転手もイライラしてクラクションを鳴らす、まさに悪循環ですね」
さらに驚いたのは、踏切が開いている間に線路内で記念撮影をする観光客の姿だ。実際、インタビュー中にも線路内でポーズをとる人が見受けられた。
さらに取材中、思わず目を疑うような場面にも遭遇した。
40~50代と思しき白人男性が、線路内に数歩足を踏み入れると、財布から小銭を取り出し、それを線路の上に置いたのだ。最初は記念撮影かその国特有のおまじないか何かと思ったが、男性は踏切の音が鳴るとそのまま立ち去り、小銭はその場に放置された。
あまりのことにあっけにとられてしまい、注意することもできなかった。
幸い、その後通過した電車は反対方向行きだったため、なにも起こることはなかった。踏切が再び開いたあと、筆者は急いで線路上の小銭を回収した。10円玉だった。もしこれが電車に弾かれて人混みの中へ飛んでいたら、下手すれば脱線でもしていたら──と思うと、ゾッとする。
なぜこのようなことをしたのだろうか。インタビュー中の地元住人も「なんのつもりでしょうね……」と困惑していた。小銭を置いた男性はその後すぐに人ごみに消えていったので、真相はわからない。
もちろん、すべての外国人観光客がマナー違反をしているわけではないし、日本人だって海外で問題を起こすことはある。ただ、それを理由にこうした問題を放置してよいはずもない。
世界的な観光地であり、日本の由緒正しき伝統を重んじる京都だからこそ、誰もが気持ちよく過ごせる工夫や、ともに守るべきルール作りが求められている。
取材・文・撮影/集英社オンライン編集部