独身者はなぜ老後に困るのか?

仮に、あなたが独身で通すなら、心しておくことがあります。それは「現役と老後の生活レベルの連続性」です。老後は年金と貯蓄の取り崩しで生きていくことになりますが、独身者ほど苦しい思いをするはずです。

その一番の理由は、独身者は妻子持ちよりも、自由で奔放な生活をしていることが多いことにあります。たとえば家庭持ちは、世帯年収が1000万円あったとしても、子どもの教育費や食費、また大きい住宅が必要なことや、水道光熱費なども家族分かかり、出費がかさみます。そのため、夫婦で自由にできるお金は、年に100万円程度にとどまります。

だから、昼はお弁当を持参したり、外食するにしてもファストフードや安い定食などが定番となっています。

夜はお腹が空いても、途中、寄り道もせずに帰宅し、家で夕飯という生活です。

飲みに行くのも、付き合いが主で、月に数回が関の山でしょう。

男性ならパソコンやゴルフ道具、女性なら化粧品や洋服も、家族会議でOKが出て初めて買うことができます。30代からこうした「抑制的な生活」に慣れているから、老後も苦労なく、つましい生活を送ることができるのです。

もちろん、家族のためを思い、住宅を購入してローンを完済まで払い続けるケースが多いので、老後は家賃のない生活が送れるでしょう。

しかし、独身で通した場合、「老後の生活」に軟着陸するためのこうした訓練や準備をしていない人が多いのです。常時外食をし、洋服や趣味に自由に投資し、夜は飲んだくれてタクシーで帰宅したりする。そんな放蕩癖が染みついている人も少なくないでしょう。

加えて家も賃貸で通していたりすれば、手元に資産は残っていません。そうしていきなり年金暮らしとなれば、それはもう耐えられないのが目に見えています。

無理なく老後にソフトランディングするためには、家族持ちと同じように、出費を抑える癖をつけ、同時に、資産形成をすることが重要でしょう。それらを実行しながら、生活の質を保つために決め手となるのが「節税」行動となります。

独身者ほど老後の生活が苦しくなる最大の理由…最低限の仕事だけしてきた「静かな退職」者が抱えるリスクとは_5
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文/海老原嗣生 写真/shutterstock

『静かな退職という働き方』(PHP研究所)
海老原嗣生
『静かな退職という働き方』(PHP研究所)
2025年2月28日
1,210円(税込)
224ページ
ISBN: 978-4569858791

「静かな退職」――アメリカのキャリアコーチが発信し始めた「Quiet Quitting」の和訳で、企業を辞めるつもりはないものの、出世を目指してがむしゃらに働きはせず、最低限やるべき業務をやるだけの状態である。
「働いてはいるけれど、積極的に仕事の意義を見出していない」のだから、退職と同じという意味で「静かな退職」なのだ。

・言われた仕事はやるが、会社への過剰な奉仕はしたくない。
・社内の面倒くさい付き合いは可能な限り断る。
・上司や顧客の不合理な要望は受け入れない。
・残業は最小限にとどめ、有給休暇もしっかり取る。

こんな社員に対して、旧来の働き方に慣れたミドルは納得がいかず、軋轢が増えていると言われる。会社へのエンゲージメントが下がれば、生産性が下がり、会社としての目標数値の達成もおぼつかなくなるから当然である。
 そこで著者は、「静かな退職」が生まれた社会の構造変化を解説するとともに、管理職、企業側はどのように対処すればよいのかを述べる。また「静かな退職」を選択したビジネスパーソンの行動指針、収入を含めたライフプランを提案する。
 また「静かな退職」が、少子高齢化や男女共同参画といった政府が直面する課題にどのような影響をもたらすかも著す。

「静かな退職」は、非難されるべき働き方なのか、それともビジネスパーソンの「忙しい毎日」を変える福音となるのか――「雇用のカリスマ」が解き明かす。

◎手を抜けば抜くほど「労働生産性」は上がる
◎業績に関係ない努力が信奉される異常
◎日本型賞与も「忙しい毎日」の保全ツール
◎副業は残業割り増しを超えなければ意味がない
◎ヒラ社員でも高すぎるミドルの年収
◎「静かな退職」コースを軟着陸させるには

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