「静かな退職者」の年収レベルを探る
続いて生活設計を考える上で重要な、年収レンジを見ていくことにします。
「日本人の平均世帯年収は400万円だ」という話がよくニュースで流れますが、これは大きな誤解です。このデータは、2022年国民生活基礎調査(厚生労働省)の発表数値なのですが、まず、大きな幻惑要素として、ここには年金暮らしをしている高齢者が含まれます。
高齢者の中には企業オーナーなどの億万長者も少数いるのですが、それでも均した世帯年収は低く、その中央値は244万円となっています。また、母子家庭や失業者もここには含まれており、これら総計の中央値が423万円となるのです。
これを壮年期の子育て世帯に絞ると、中央値は731万円になります。付け加えておくと、勤労世帯の年収状況を、国民生活基礎調査と毎月勤労統計調査(厚生労働省)で比較すると、前者は後者よりも1割程度、低い数字となっています。
この違いについては、「個人調査である国民生活基礎調査よりは、企業の支払いベースの毎月勤労統計調査の方が数字の正確性は高い」と言われています。
ここまでつらつらと書いてきましたが、日本人の平均年収というのは色々な数字がごちゃ混ぜになって、かなり低めに出ているということをまずはおわかりいただきたかったのです。前置きが長くなりましたが、「静かな退職」の基本条件となる「大卒者×1000人以上の企業のヒラ社員と課長、部長職の年収状況」と「企業規模別にヒラ社員の年収」を比較しました。
「大卒者×1000人以上の企業のヒラ社員と課長、部長職」の年収状況をみると能力UPにより課長以上になると1000万円を超えていきます。またヒラ社員も順調に昇給していきます。従業員数1000人以上の大企業では平均年収が30代前半で783万円、同後半では820万円、40代前半が869万円と急伸し、40代後半で935万円に到達しています。
「企業規模別 ヒラ社員の年収」をみると、500〜999人の企業は大企業とは差がつきこそすれ、それでも30代前半で683万円、40代前半で750万円、40代後半で790万円。100〜499人の企業でも30代前半で587万円、40代前半だと677万円、40代後半なら723万円となっています。
ちなみに、これは平均年収なので、もう少し評価が低い場合の年収として、「下位25%」にあたる人の年収は、中位年収(=1)と比べてどのくらい落ちるのでしょうか。
大手の方が評価による減収幅が大きく、40〜50代では標準年収よりも2割程度下がり、中規模〜準大手企業だと1.5割程度のダウンに留まるのが見て取れるでしょう。
このことから言えるのは、「静かな退職者(=下位3割ゾーン)」の年収相場は、従業員数1000人以上の企業なら30代後半で600万円台後半、50代ピークで750万円程度、同500〜999人規模なら30代後半で600万円強、50代ピークだと700万円程度だとわかるでしょう。
おおまかに言って、この生き方を選んだ人は、キャリア後半の年収は、大手で750万円前後、中堅なら600万円台の期間が長くなると頭に置いてください。