「私は、世界一幸せなホームレス」
その後、芸能界にも知り合いができ結婚。2人の子どもにも恵まれた。
「モデルの仕事は来ていましたが、1人で子どもを育てなければいけなかったのと、夫から『家にいてほしい』という要望もあったので、休業することにしました。
私はもともとお料理も掃除も裁縫も大好きだから、家のことに手を抜きたくなかったというのもあります。全部一人でやっていました。
でも、収入が不安定だったのと、インターナショナルスクールに入れた子どもたちの学費もかかるため、私は自宅で英会話教室を始めました。一時期は生徒さんが100人くらいいましたが、実家で大人数には慣れていたから、全然気になりませんでした(笑)」
日本語が上手になるにつれ、モデル時代に世界各国で学んだ対人スキルと、エンターテイナーの素養も発揮し始めたカイヤさん。そこを買われてタレントとしても活躍するようになったのは、周知の通りだ。
「テレビに出たときの“オニヨメ(鬼嫁)”キャラは、演じていました。ふだんと全然違う自分を演じてみせたら、みんながおもしろがってくれた。タレントとして収入ができたのはありがたかったです」
しかし、結婚生活には歪みが生まれ、2017年に始まった離婚裁判は6年の時間をかけ、2023年に正式に離婚へと決着。この際、妻という肩書きのほかに、もうひとつ手放したものがある。
「これまで住んでいた家は手放しました。
裁判中に、子育ても一段落しましたし、モデルの仕事を再開するようになって、日本と海外を行ったり来たりの生活に。それからは、ホテルに滞在したり、知り合いの家に泊めてもらっています。
日本では、息子の家に居候しています。『いい大人なのに、定住しないなんて』と呆れられていますが、今の私は、世界一幸せなホームレスだと思います。
離婚して本当に実感したのは、“人間は自分が大切なものと必要ではないものを見極めれば幸せになれる”ということ。いろいろスッキリしたし、今が一番幸せかもしれません」
自分には母親譲りの努力と奉仕の精神が身についていると話すカイヤさんは、離婚を決意してから次のステージへのビジョンも見据えた。
世界各地への物資支援のボランティアを始め、人に寄り添う仕事がしたいと、心理カウンセラーやセラピストなどの資格も取得した。現在はシングルマザーや、セックスに悩む人たちを対象に、カウンセリングのセッションもしている。
「モデルの仕事は、私を世界中の素晴らしい場所へと導いてくれた。さまざまな文化を体験し、多くの人と出会い、心を通わせる機会がありました。
でもね、ファッションの世界を超えて、私はずっと『人と人とのつながり』に強い関心を持ってきたんです。
世界中に貧困で困っている人たちや、お金があってもつらい思いを抱えている人がたくさんいる。私の人生経験や長年の学びの結晶を誰かのために役立てたい。多くの人々が目標を達成し、自分の内なる力を取り戻せるようにモチベーショナルコーチとしてサポートしてます」
カイヤさんは、これまで自身の身に降り注いだ批判や誹謗中傷を気丈に振る舞いながら受け止めてきたが、その度に深く傷ついたそうだ。そして、今は自分の使命についてこう話す。
「私は、『できっこない』と否定されたり、周囲と違うことで偏見や誤解もたくさん受けてきました。でも、自分を信じる力で、早く立ち直れる方法も身につけてきた。
その秘訣はね、まず自分自身を愛する、大切にすること。自分の気持ちに正直になり、それから周りの人を幸せにする方法を考えること。
その方法を、悩んでいる人たちに正しく伝えていくのが、これからの私の使命のひとつだと思っています」