もし大和(DeNA)がFA移籍しなかったら
現役選手では、埼玉西武ライオンズの源田壮亮選手やオリックス・バファローズの安達了一選手は、飛びぬけた身体能力がなくても、堅実にプレーする形に共感できます。
そして、もう1人。横浜DeNAベイスターズの大和選手は、阪神タイガースでチームメイトだったこともあり、個人的には特に頑張ってほしいと思っています。守備に関しては僕よりはるかに高い能力を持っています。彼の打球に対しての距離感や捕ってから投げるまでの感覚は、練習してもなかなか掴めないものです。
例えば、打球との距離感で言えば、打った瞬間に走り出しているのか、自分で走ろうと思ってから走り出すのかでは、打球に追いつくスピードが全然違ってきます。大和選手は、そういう打球に対しての反応が抜群でした。
もし、大和選手がFA移籍をせずに阪神タイガースにいれば、遊撃手を長く守ることができる可能性はあったと思います。打撃にやや不安があるとはいえ、年間2割5分ぐらいの打率を残してくれれば、甲子園という土のグラウンドでの守備力は申し分ありませんし、年齢的にもチームを背負える選手の1人になっていたのではないでしょうか。
今の野球は、全てが数値化されるようになってしまいました。もちろんショートの守備範囲も数値化されていますが、これだと経験や感覚といった数値化されないものが評価されにくくなります。その結果、今後は長くショートを守れる選手がどんどん減っていくのではないかと危惧しています。
ショートというポジションは、長く守らないとわからない難しさや大変さがあります。僕の経験では少なくとも5年以上は守り続けないとつかめない独特の感覚があると思っています。数値だけでは推し量ることのできない視点からも、ショートというポジションを見てみると面白いかもしれません。
構成/飯田隆之 撮影/宮脇進