「ジョブ型」への動き

もはや大量選考時代の名残としか思えないような採用慣習をあえて疑い、舵を切る企業を見てみました。ただお気づきのとおり、これまで述べてきた、学歴情報を企業がありがたがってしまう理由の「職務要件(ジョブ)」のなさについては、メスが入りきってはいないようにも思えます。

小売りやホテルのようなサービス業ではまだ職務の特定が難しい段階なのかもしれません。ただ、見渡すと、エンジニアリングやIT業界では、職務の特定が比較的スキルベースにされ始めているケースも。ジョブレスな「職務遂行能力」頼みの、新卒一括採用をやめる動きが出ているのです。

・富士通の事例

海外に展開している富士通
海外に展開している富士通

「富士通の1つの解が20年から順次導入してきたジョブ型の拡大だ。入社2年目以上の社員や管理職に限ってきた対象を26年4月からは新卒者まで広げる。

部門と職種を決めて入社希望者を募集。各自の能力や適性を踏まえ、職務と待遇を内定時に提示する。職種はエンジニアやマーケティングなど8種類。待遇面では初任給が40万円を超える新卒者が現れる可能性がある。現状は20万円台後半で一律だ。

採用面接だけでは能力や適性の十分な見極めが難しい。実務経験のない新卒者側も希望職種を決めにくい。そこで1〜6カ月間に及ぶ長期の有償型インターンシップを拡大する。募集人数を段階的に増やし、2年後には現状比10倍の300人にする」

これはある日の『日本経済新聞』(2024年8月9日)の記事ですが、なるほど、職務要件を明確にし、人材の見極めの期間も長く取る。これなら学歴にこだわる必要もなさそうです。

他方で富士通のケースで気になるのは、職務を個人の「能力や適性」で行なっているフレームに留まっている点です。これだと企業側は「お手並み拝見」的「見極め」の延長線上としてのジョブ型というムーブに見えます。現場の既存社員との組み合わせや、事業との組み合わせにも鑑みた採用こそが一般的になる日は、もう少し先かもしれません。