「相手投手のクセ」を盗む優れた嗅覚
ドジャース一塁コーチのクレイトン・マクラフは、大谷が「俊足」で「ストライドが大きい」ことは知っていたという。だが、2024シーズンに入るまで気づかなかったのは、大谷がどれほどこの強みを試合に持ち込むことに積極的かということだった。
「もうスプリングトレーニングのときから始まっていたんだ。オフ中から多くの時間を割いてストレングス&コンディショニングコーチのトラヴィス・スミスと共同で走り方のメカニクスを修正していた。どうすれば最大限に加速できるのかと。ここがいちばん重要な点だった。
つまり、『もともと脚は速いんですが、どうすれば最初の10フィートをもっと速く走りだせますかね?』みたいな感じだよ。いちばん大きな違いの出る部分だからね。どうすればもっと速く加速できるのか?当たり前だけど、彼は巨体だから、いろいろなパーツを動かさないといけないんだ。
そういった研究の結果、心地よい組み合わせみたいなものがだんだんわかってきて、スプリングトレーニングからシーズンを通して、なるほど、これなら帰塁も盗塁も両方できる、対戦投手の〝クセ〟もわかってきた、そういうことじゃないかな」
同コーチによると、大谷はそんな「相手投手のクセ」を盗む点でも非常に優れた嗅覚を備えているのだという。
「たくさんのビデオを見ているし、すごく研究しているよ」
マクラフの任務の1つに、そんな相手投手のクセを研究して見抜くことも含まれている。
「牽制と投球のクセの違いなんて、本当に微々たるものなんだ。3連戦に入る前には必ず時間をつくって相手投手のクセを研究するのだが、お互いに協力してクセをみつけて試合前には復習するよ。動画を何回も見て、『おい、この投手のクセはこれだ。見えるか?』みたいなやりとりをするわけさ。
ときには投球のクセがあまりにもくっきりと出ていて、『この動きが試合中に出たら、そのまま走っていいぞ』ということもある。
ときには、タイムを計っていけるかどうかを判断することもある。『どうだ、この投手と捕手の組み合わせで(送球の速度は)X秒だけど、それより速く二塁に行けるか?』とかね」
エンゼルス時代の大谷と一緒に野球をしたことがないので、マクラフはこのようなやりとりが以前あったのか、それとも2024年から始まった独自の試みなのかはよくわからない。だが、いくつか確かなこともある。