増山氏は「県民が知るべき情報を提供したことは反省しない」

こうした結論は委員会が行なった県職員への証人尋問やアンケートである程度予想されていた。2月18日に奥谷謙一委員長が示した報告書素案も、書きぶりはこれほど強くはなかったものの、方向性は同じだった。(♯31)

ただ、素案から一変したことがある。斎藤氏を徹底して擁護してきた維新が斎藤氏に不利な書き方に異を唱えたいくつもの「意見」が一掃され、全会一致の意見として取りまとめられたことだ。

昨年12月11日、記者会見する兵庫県百条委の奥谷謙一委員長(左)と岸口実副委員長(右) 撮影/集英社オンライン
昨年12月11日、記者会見する兵庫県百条委の奥谷謙一委員長(左)と岸口実副委員長(右) 撮影/集英社オンライン

「Aさんのプライベートな情報の開示を求めた岸口、増山両県議が、今度は昨年11月の知事選のさなかに百条委への県民の信用を損ねる異常な行動をとっていたことが分かったからです。発覚後、2人は百条委委員を引責辞任し、維新会派も離れました。これを受け、維新は報告書に『反対意見』を盛れとの要求を取り下げたのです」(県議会関係者)

関係者の話を総合すると、増山氏は昨年10月25日に秘密会で百条委が開かれた際、片山元副知事の証人尋問の音声を隠れて録音。Aさんのパソコンの中から“不倫日記”や“クーデター計画”が出てきた、と話す片山氏の声が入った音声データなどを知事選公示日の10月31日、神戸市内のカラオケボックスで立花氏に提供した。

11月1日には岸口氏も、仲介に入ったX氏とともにホテルオークラ神戸で立花氏に面会。百条委で疑惑追及の先頭に立った竹内英明元県議らを斎藤氏をハメた“黒幕”だと書いた怪文書を渡している。

この音声データや怪文書を基に立花氏はAさんや竹内氏らを非難し「斎藤さんは悪くない」と斎藤氏を応援する“2馬力”の選挙を展開。こうした主張がSNSで拡散し、斎藤氏の再選の力になったとみられている。

昨年10月31日、立花孝志氏がXで公開した隠し録音の音声が入る動画
昨年10月31日、立花孝志氏がXで公開した隠し録音の音声が入る動画

選挙が終わっても竹内氏らを非難する声はSNSでもリアルの世界でも鎮まらず、誹謗中傷にさらされた竹内氏は県議を辞職した後、ことし1月に急逝した。自死とみられている。

「立花氏に材料を提供した2人は自分たちの行動が発覚すると陳謝はしました。
しかし岸口氏は『怪文書の作成者も作成の狙いも分からない』と主張して動機や経緯の説明を拒んでいます。増山氏は、ルール違反はしたが県民が知るべき情報を提供したことは反省しないと言っています」(地元記者)