危惧される『反外国バイアス』
“超”少子高齢化社会へと突き進む日本にとって、現行の高額療養費制度の課題や問題点はどんなところにあるのか。政治アナリストの大濱崎真氏に話を聞いた。
「少子高齢化により医療費全体が増大しており、高額療養費制度の給付額も増加している事実があります。
所得による不公平さを感じる者も多く、(所得の高低により保険料が変化する)応能負担に課題が残るとされています。外来診療への適用が限定的であり、医療の初期段階での効果は大きく見込めず、かえって受診控えが生じることも懸念されています」(大濱崎氏、以下同)
現役世代の負担を軽減すべく、膨れ上がる国民医療費をどこで削減すべきか……。そんな議論が巻き起こる中、物議を醸した玉木氏の「90日滞在の外国人が数万円で1.6億円の治療が受けられるのはどうなんだ」という発言には、どんな意図や狙いがあるのか。
「アメリカの行動経済学者、ブライアン・カプランは、大多数の有権者が持つバイアスの一つに『反外国バイアス』を挙げています。反外国バイアスとは、外国人との取引による経済的便益を過小評価する傾向のことで、外国人のことを『自国人を搾取する悪人』と捉えてしまう現象を指します。
保護貿易や移民排斥といった自国優先主義がはびこるのは、この反外国バイアスによるもので、経済学的に訓練のされていない有権者は、そうした考えによって、現行の高額療養費制度について外国人を排斥する考えに共感しやすいことが考えられます」
実際、玉木氏の発言の通り、在留外国人がしかるべき在留資格を有し、3カ月以上在留すると認められれば、国民健康保険の加入が認められることから、同制度を使用することは可能だ。
しかし、厚生労働省が公表した資料でも、2020年3月~2021年2月までに支給された高額療養費のうち、外国人の割合は約1%で、フリーライドのような過去事例は確認できていないことから、外国人が現行の制度を圧迫しているとは考えづらい。