低調な入場券販売
「(入場券の)売り方にもうひとつ工夫がないと、(売れ行きを上向かせるのは)なかなか難しい。いろいろなことを検討している」
万博の開幕が約1年後に控えた2024年4月4日。大阪市内で開かれた万博協会・機運醸成委員会の総会後、委員長を務める関経連会長の松本(万博協会副会長)は報道陣にそう語った。
入場券は前年の11月末(開幕500日前)に売り出したが、この頃までに売れたのは122万枚。開幕までの目標(1400万枚)の1割にも達していなかった。
松本は「必ず前売りで1400万枚は売る決意だ」とも述べた。半分の700万枚は企業が数万枚単位でまとめ買いする計画のため、心配していないとした。
問題は一般向けの販売だった。ふるわない要因は、いくつか考えられた。
第一に、開催の機運が高まっていなかった。府市が2021年度に行った調査では、万博に「行きたい」「どちらかと言えば行きたい」と答えた人は合わせて51.9%だった。だが2022年度は41.2%、2023年度は33.8%と下がった。海外パビリオンの建設遅れや公費負担増が、万博への期待を押し下げた可能性がある。
値段が高いという声もあった。いつでも1回入れる「一日券」は会期中に買うと大人(18歳以上)が7500円、中人(12〜17歳)が4200円、小人(4〜11歳)が1800円。繰り返し使える「通期パス」(大人は3万円)など、入場券はさまざまな種類がある。
万博協会は大人の一日券の値段について、2019年時点では44米ドル(当時の為替レートで約4800円)で考えていた。内部で検討していた2022年春の段階では6000円にする計画だったが、7月に元首相の安倍晋三が銃撃されて警察当局から要人の警備をより厳重にするよう求められたことに加え、人件費上昇や物価高もあり、7500円に引き上げた。
前売り券は、買う時期やチケットの種類によって割り引いている。だが、万博で何が見られるかという肝心の「中身」の全容は見えなかった。
売り方に対しても、不満の声が上がった。
入場券は当初、ネットで買う「電子チケット」しかなかった。前売り入場券を買うにはまず、「万博ID」を登録しなければならない。スマートフォンやパソコンでしか操作できず、手間や時間がかかる。買い方が分からない高齢者もいたという。