ハノーバー万博は赤字
万博会場の人工島・夢洲へ行く陸路は、南北1本ずつの道路と、大阪メトロ中央線しかない。万博協会幹部らはそんな状況を踏まえ、こうこぼした。
「予約なしで来て、会場の入り口前で長時間待たされ、不満がSNSで発信される方がリスクは高い」
「(来場者が殺到すれば)地下鉄で事故が起きる可能性がある。そうなれば、万博そのものがおしまいだ」
一方、ある府幹部は反論した。
「チケットは売ってなんぼ。売れる前からリスクのことばかり話しても仕方がない」
決着したのは、紙チケットの販売まで残り約2週間となった2024年9月27日だった。
会期(184日)のうち、ゴールデンウィークや一部の夏休み期間などを除いた98日間で予約なし入場を認めることになった。万博協会幹部は「夢洲へのアクセスと安全面を考慮した、ぎりぎりの落としどころだった」と振り返った。
万博協会は紙チケットの販売目標は設けておらず、「どれぐらいの量になるかは未知数だ」(事務総長の石毛)とした。
2000年のドイツ・ハノーバー万博では、来場者数が目標の半分にも達せず、国と地元自治体が1200億円の赤字を税金で穴埋めした。
この時のテーマは「人間、自然、技術」。先端技術や発明品の展示が主な目的とされた従来型の万博と違って、環境問題を切り口に「課題解決」をめざした。だが、PR不足や高額な入場料が足かせになったとされる。
そうした過去があるにもかかわらず、今回の万博が赤字になった際の負担者・負担割合は決まっていない(2024年12月時点)。国、府市、経済界などからの出向者が集まる「寄り合いの組織」である万博協会が、単独で負債を負うことはできない。
国民の負担が増すリスクは、くすぶり続けている。
写真/shutterstock