各作家について(作家名五十音順)

ヤマザキマリ
マンガ家のみならず、肖像画家、絵画修復家、執筆家、イラストレーターでもある。東京に生まれ、人生の半分以上をイタリア、シリア、ポルトガル、ブラジル、アメリカなど海外で過ごした。ヤマザキは、西洋の史実・物語や伝記をマンガのストーリーにすることに優れており、内面的な感情の移り変わりを巧みに捉え、視覚的な物語として表現する。

実在の人物だけでなく、時には架空の人物の人生を描き出すことで、時空を超越した人間性についての教訓を描いている。マンガの枠を超え、自身の作品の脚本化や映画製作者、作家との共同プロジェクトにも貢献し、その芸術性の幅をさらに広げている。近年では、2021 年に手がけた山下達郎の油彩肖像画がアルバム『SOFTLY』のジャケットに用いられるなど、音楽、視覚芸術、マンガの間の相乗効果をより効果的に浮き彫りにした。

展示では、手描き、デジタル制作原画の双方を展示する。ヤマザキがギャグやユーモアを通じて人生の重要な教訓を伝え、文化の壁を越えることでマンガが効果的な国際言語となり得ると理解できる。

展示予定作品:『プリニウス』(とり・みき共著/新潮社)、『テルマエ・ロマエ』(KADOKAWA)、『続テルマエ・ロマエ』(集英社)『スティーブ・ジョブズ』(講談社)、『美術館のパルミラ』

ヤマザキマリ、とり・みき『プリニウス』© Mari Yamazaki, Tori Miki / Shinchosha
ヤマザキマリ、とり・みき『プリニウス』© Mari Yamazaki, Tori Miki / Shinchosha

山下和美(やました・かずみ)
1970年代にデビュー。一目でそれとわかる繊細な線描と、内面世界や知覚を見事に捉えたキャラクター描写が高く評価された『ランド』は、第25回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞、そのほか数々の賞に輝いている。

山下は、社会的なプレッシャー、存在に関する問い、人間関係の複雑さ、兄弟姉妹間の対立や価値観などの信念体系を鋭く探求する一方、身の回りの日常をテーマにしたマンガも描いている。ジャンル間の伝統的な境界線を巧みに曖昧にした作品で、マンガ界において類を見ない存在となっている。

近年、地元の文化財建築を保護するために立ち上げたクラウドファンディングをテーマにしたマンガでも成功をおさめた。マンガという媒体が、その枠をこえていかに哲学的、社会的な複雑な問題に取り組むことができるのかを示す例として際立っている。

手描き原画、デジタル制作原画の両方を展示する。山下が取り組むテーマや、願わしい環境のために行動を呼びかける彼女のメッセージは、マンガが変化を促す媒体となりうること、そしてその力を明確に示している。

展示予定作品:『ランド』『不思議な少年』(講談社)、『数寄です!』『続 数寄です!』『世田谷イチ古い洋館の家主になる』(集英社)

山下和美『ランド』© Kazumi Yamashita/ Kodansha Ltd.
山下和美『ランド』© Kazumi Yamashita/ Kodansha Ltd.

よしながふみ
多彩なストーリーテリングと卓越した線描で高く評価されている、才能豊かな作家だ。異性愛をテーマとしても、関係自体を中心とするのではなく、愛、魅力、権力についての概念を覆し、存在感のあるキャラクターを通じて、日常生活に新鮮な視点を与えてくれる。『きのう何食べた?』では、中年の男性カップルが直面する現実や課題を、料理や食事を通じて描く。男性に代わって女性が支配する架空の江戸時代を描いた『大奥』は、2009年の第13回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞した。どちらもに実写ドラマ化されている。

題材は非常に多岐にわたり常に深い洞察を伴う。初期作品である『フラワー・オブ・ライフ』では同人誌の世界に踏み込み、「このマンガがすごい!2025」(宝島社)オンナ編第1位を獲得した『環と周』では、さまざまな主人公のオムニバスで、永続する愛の変遷を描いた。2024年には最新作『Talent –タレント-』の連載も開始している。

本展では、マンガの原画を続きページで展示して、物語展開と、視覚的に物語を構成するプロセスに焦点をあてる。

展示予定作品:『きのう何食べた?』(講談社)、『大奥』『フラワー・オブ・ライフ』(白泉社)、『環と周』(集英社)

よしながふみ『大奥』©Fumi Yoshinaga/ Hakusensha, Inc.
よしながふみ『大奥』©Fumi Yoshinaga/ Hakusensha, Inc.
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 「Art of MANGA」展覧会
主 催 : ファイン・アーツ・ミュージアム・オブ・サンフランシスコ
協 力 : KADOKAWA、講談社、集英社、小学館、新潮社、スマイルカンパニー、ちばてつやプロダクション、白泉社、
フジオプロダクション、双葉社、ふらり 他
会 期 : 2025年9月27日(土)~2026年1月25日(日)
会 場 : デ・ヤング美術館(アメリカ・サンフランシスコ)https://www.famsf.org/visit/de-young
50 Hagiwara Tea Garden Dr., San Francisco, CA 94118, USA
概 要 : 導入部/ちばてつや、赤塚不二夫の作品によるマンガ入門。歴史、読み方や制作工程等
個別作家セクション/高橋留美子、谷口ジロー、ヤマザキマリ、荒木飛呂彦、山下和美、田亀源五郎、よしながふみ、
尾田栄一郎それぞれのコーナー(展示順)。表現方法、ジャンル、編集との協業、講談社「K MANGA」に見る
デジタルの広がり、著作権、海賊版問題、ファンの世界、「SHUEISHA MANGA-ART HERITAGE」等