各作家について(作家名五十音順)
赤塚不二夫(あかつか・ふじお)
ギャグマンガの分野を画期的に切り拓いた「ギャグマンガの王様」。貸本マンガでキャリアをスタート。六つ子が主人公の『おそ松くん』、家族ものの『天才バカボン』で、ギャグマンガの巨匠としての地位を確立した。
誇張され、ナンセンスな世界で活動するキャラクターたちには、赤塚自身の漫才やスラップスティックへの関心を色濃く反映している。また、『ひみつのアッコちゃん』は、日本でもっとも早い時期の「魔法少女」ものである。
これらのマンガはアニメ化もされ、50年たった今でも、幅広い世代からの共感を得ている。
導入コーナーでの展示予定作品:『ギャグほどステキな商売はない』(廣済堂出版) 、『おそ松くん イヤミの水戸黄門:そのころの江戸はこうだった!!』『ギャグ+ギャグ もーれつア太郎外伝:サイケサイケビーチにて』(小学館)、『天才バカボン:ねむれないのだ夢の中』(講談社)
荒木飛呂彦(あらき・ひろひこ)
代表作は1986年から現在まで続く『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ。洗練された芸術性と視覚的な魅力をもつシリーズの累計発行部数は1億2000万部以上。その物語は、強い信念を持つことで人は内側から輝くということを読者に伝える。
荒木のスタイルは、瞬時に彼の作品とわかる、非常に洗練されたダイナミックなポーズが特徴だ。“スタンド”と呼ばれる超能力の具現化も重要な要素である。彼のアートは、古代ギリシャおよびミケランジェロやイタリア・ルネサンス期の芸術家に着想を得た「精神と身体の融合の美」という概念を称賛し、それを心惹くストーリーラインに組み込んでいる。
展示セクションでは、マンガ家としての荒木と、その創作課程などに焦点を当てている。展示作品はすべて手描き。絵を描くプロセスを紹介する映像と共に、12点の等身大パネル作品『裏切り者は常にいる』が日本国外で初めて公開される。
展示予定作品:『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ、『岸辺露伴は動かない』(集英社)
尾田栄一郎(おだ・えいいちろう)
『ONE PIECE』は、物語を伝える圧倒的な力、世界観、そしてユーモアの面で、批評家、読者双方から史上もっとも重要な傑作マンガのひとつと評されている。1997年7月に「週刊少年ジャンプ」で連載を開始して以来、コミックスの巻数は110巻を数え(2025年1月時点)、全世界で5億1千万部以上の発行部数を誇る(デジタル版除く)。
ストーリーは、若き海賊モンキー・D・ルフィが、伝説の秘宝“ONE PIECE”を求めて旅立ち、道中で真の友情を見つけながらあらゆる困難に立ち向かう姿を描き、常に時代の精神を反映している。
このセクションでは、多くの少年マンガの読者を巧みに魅了する尾田のさまざまな芸術的技法を紹介する。尾田自身が描き彩色した原画を鑑賞できる貴重な機会であり、作品を読む時の新たな洞察につながるだろう。
展示予定作品:『ONE PIECE』(集英社)
高橋留美子(たかはし・るみこ)
日本の宝とも呼ぶべき高橋は日本マンガ史においてもっとも尊敬され、影響力の強い作家のひとりである。ユーモア、ロマンス、ファンタジーといった要素を巧みに融合させた心を掴む物語によって高い評価を得ており、マンガという媒体の可能性を常に押し広げてきた。 20歳でデビューして以来、数々のヒット作を生み出し、『らんま1/2』では伝統的な性別の枠組みに挑戦し、日本のユーモアとコミカルな武道を世界中の読者に紹介した。
高橋は、長らく男性が主流だったマンガ業界で性別の壁を打ち破り、作品のコミックスは累計2億3,000万部以上を発行。2019年から連載中の最新ヒット作『MAO』では、アイデンティティの探求やロマンスを織り交ぜながら、超自然的かつ歴史的なテーマを描いている。
展示では、視覚を通して物語を伝える名手から、マンガの構成と読み解き方を学ぶ。高橋のマンガは、超自然的なものへの関心を通し、マンガがいかにして読者を誘い、別世界への扉を開けるのかを教えてくる。全原画は、高橋本人とアシスタントによって描かれている。
展示予定作品:『MAO』『人魚』シリーズ、『犬夜叉』『境界のRINNE』『らんま1/2』(小学館)