『ドラゴンボール』『キン肉マン』『シティーハンター』
次は家族関係です。実際に漫画には描かないとしても、僕がキャラクターを考えるときは必ず「この人はどういう生い立ちなのかな」と想像するようにしています。
ジョナサンは貴族の息子で、母親が早くに亡くなったこと以外は、何不自由ない境遇にいますから、対するディオは貧しい、悲惨な家庭に育ったということにしました。母親が早くに亡くなったことはジョナサンと共通していますが、ディオの方はアルコール依存症の、どうしようもない父親からDVなども受けています。
ただ、それだけではまだ何かが足りない感じがしたので、「ひどい父親は嫌いだけど、お母さんは好き」となりがちなところを、「あんなおぞましい父親に尽くした母のことも軽蔑している」という設定にしました。このあたりのディオの心情は漫画では描きませんでしたが、描かれていない部分も「こんなとき、ディオならどうするか」と考える際の大事な情報になるのです。
そんな不幸な生い立ちに負けずにのし上がっていくディオですが、それができるのは単にハングリー精神が旺盛というだけではなく、何か突き抜けた才能があるということにすれば、さらに「かっこいい」キャラクターになります。そこで、学校には通えなかったけれども、通う必要がないくらい抜群に頭がいい、天才的な少年という要素も付け加えました。
続けて埋めていったのが、「性格」の項目です。「ウソと虚飾」「次に支配」「そして排除」などの言葉が並んでいますが、要するにディオはパラサイトなんです。
自分の本心を隠してジョースター家という貴族に寄生し、奪えるものを奪いながら、乗っ取っていく。そのときジョナサンが邪魔なので、排除しようとするわけです。そこから、ジョナサンとディオの戦いが始まっていきます。
そうやってディオのキャラクターをだいたい作ったところで入れていったのが、吸血鬼の世界観でした。
なぜ「吸血鬼」だったかというと、当時の『少年ジャンプ』は『ドラゴンボール』『キン肉マン』『シティーハンター』などヒット漫画の名作揃いで、その中で自分の個性を出していくには、『ジャンプ』ではほとんど誰もやっていないダークな世界を描いてみるのがいいのではないか、と考えたからです。
編集部からは「そういうのはウケないんじゃないかな」と言われましたが、そもそも僕が描きたかった「自分には身に覚えがない、先祖からの因縁で敵が襲ってくる恐怖」は、イケイケの明るい世界観とは水と油です。
もし、「やっぱり明るい世界観じゃないとダメかな」と自分を曲げていたら、『ジョジョ』のキャラクターと世界観が融合せず「なんかしっくりこない漫画」になっていたでしょう。
「絶対に譲れない」と自分の想いを貫いて、「吸血鬼だったら、不老不死だよね」「ディオなら、こういうセリフを言うだろうな」と、いろいろな要素を融合させていき、出来上がったのが、ディオというキャラクターでした。
漫画・表/書籍『荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方』より
写真/shutterstock













