大手の営業利益率が8%前後と好調な裏で7期連続赤字の会社も
学習塾はもともと大手による再編が進んでいた業界だ。
ベネッセコーポレーションは「お茶の水ゼミナール」や「東京個別指導学院」を買収。「代々木ゼミナール」を運営する学校法人高宮学園も「SAPIX」の運営会社2社を取得し、「東進ハイスクール」のナガセは、「四谷大塚」「早稲田塾」を傘下に収めた。
実は学習塾は規模が大きいほど収益性が高まりやすいという特徴がある。
売上高500億円規模のナガセは、2024年3月期の営業利益率が8.6%。300億円規模の早稲田アカデミーが8.8%、同規模で「TOMAS」を運営するリソー教育が7.9%だ。
一方、「城南コベッツ」の城南進学研究社の売上高は60億円に届いておらず、営業利益率は0.5%。100億円台の秀英予備校も2.1%だ。
城南進学研究社と売上同規模の進学会ホールディングスに至っては、7期連続の営業赤字である。
現在の塾ビジネスにおいては教室数で面を押さえつつ、顧客ニーズに柔軟に対応できるソフト力を醸成できるかが重要だ。
塾専用のバックオフィスツールを提供するPOPERは、学習塾に通う子供を持つ保護者にアンケート調査を実施している(「【保護者300人と学習塾70教室に聞いた「保護者と学習塾の意識調査」】」)のだが、その調査において、子供が通う学習塾を知るきっかけで最も多いのが「知人・友人の口コミ」で47.0%。次いで「教室を見かけた」が30.7%を占める。
一方、学習塾選びの基準を尋ねる項目において、「自宅・学校から近い」が49.7%、「子どもに合うカリキュラムがある」が44.0%、「講師や教室長とのコミュニケーションが取りやすい」が41.3%だ。
つまり、自宅から近い場所を基準とし、カリキュラムやコミュニケーションの取りやすさなどソフト面を重視。知人の高評価が背中を押しているということだ。「成績アップが見込める」(23.3%)ことや、「合格実績がある」(17.7%)かどうかは選択基準としては高くない。
塾は「SAPIX」のように圧倒的な合格ノウハウを求める層と、学習塾のソフト力を重視する層の2極化が進んでいるのだ。
特に後者は「スタディサプリ」のようなWeb型が新たな脅威になっており、競争が激化している。
さらにいえば、学習塾は集団指導型の比率が下がっている。2009年は69.0%だったが、2017年は63.0%だ(三井住友銀行「学習塾業界を取り巻く事業環境と今後の方向性」より)。
これも塾のソフト力が上がっている例だが、知名度が高く、塾講師を雇用しやすい大手がより有利になっているのだ。