受験戦争は過熱の一途を辿るも生徒数は増加せず…
少子化で学習塾・予備校が苦戦する未来は、経済産業省が示したデータから容易に読み取ることができる。
経済産業省の大臣官房 調査統計グループ 経済解析室は、学習塾を利用する6歳から18歳までの人口推移と、受講生徒数に基づいて指標化した学習塾指数を公表している(「止まらない少子化、学習塾への影響は?」)。
学習塾指数は2015年を基準値の100と定めているが、2016年以降、人口減少が続く中でも基準値を上回って推移していた。2016年が101.3、2017年が102.4、2018年が102.5、2019年が101.7である。
つまり、塾の需要は衰えておらず、市場は盛り上がりを見せていたということだ。
しかし、2020年は95.2まで下がってしまう。コロナ禍で休校要請が出たのだから当然だ。
ポイントはここからの推移だ。2021年、2022年は反動で98を上回ったが、コロナ収束後の2023年は2020年の95.2を下回っている。
人口減とデジタル化の進行によって塾の需要が消失したのは明らかだ。
リクルートホールディングスが運営するオンライン学習サービス「スタディサプリ」は、2021年3月末時点の会員数が前期比97.4%増の157万人に急増した。
このサービスは、学習者向けの独自コンテンツのほか、駿台予備校、河合塾、東進ハイスクールなどの有名予備校講師の協力を得て作成した動画を配信。現役の難関大の生徒から勉強に関するアドバイスを得ることもできる。合格特訓コースで料金は月額1万780円。
通学の時間や手間、講師の雑談、黒板の字を消す時間の短縮も考慮すれば、月2~3万円程度で学習塾に通うよりもコスパ、タイパ(タイムパフォーマンス)は圧倒的にいい。
ただし、教室に生徒を集めるタイプの塾が、志望校に導く確かな実力を持っているとなれば話は別である。
さらに経済産業省は学習塾の売上高指数も調査しており、2015年を基準値の100とすると、この数字は右肩上がりで上昇している。コロナ禍で跳ね上がり、2023年は110を軽く超えて過去最高に達した。
難関中学受験の名門として知られる「SAPIX」の小学部は、6年生の1年間だけで130~150万円の費用が必要。1年生から通うと400万円はかかる。
首都圏の2023年における私立・中学入試は受験生が過去最多となったが、受験戦争は以前よりも過熱しており、実力のある塾は高単価化が進んでいるのだ。