業務スーパーはなぜ出店スピードが落ちているのか?

しかし、神戸物産にも弱点がないわけではない。それは店舗を急拡大しづらいというものだ。

全国のスーパーマーケット数はおよそ2万3000。業務スーパーはわずか5%ほどであり、出店余地はあるように見えるが、2024年10月期における店舗純増数は36であり、2023年10月期の41からは勢いを失った。

2021年10月期から純増数は減少しており、2025年10月期も純増数は34となる見込みだ。

出店スピードを上げられない背景に、顧客の来店頻度を高めづらいことと、1店舗当たりの商圏が広いことがあるだろう。

市場調査などを行なうナビットは、業務スーパーに関する消費者調査を行なっている(「一般客も歓迎、業務用スーパーについて大調査【1000人アンケート】」)。

それによると、業務スーパーに毎日来店するとの回答はわずか0.1%。週4~5日、週2~3日を合わせても全体の4割ほどとなっている。

全国スーパーマーケット協会のスーパー利用動向調査によると、ほぼ毎日との回答は5.3%。週2~3日、週4~5日を合わせると7割近くなる(「消費者アンケートでみた スーパーマーケットと 他業態」)。

業務スーパーは冷凍食品やレトルト食品、調味料などの日持ちする商品の購入が中心となるため、来店頻度が低いのだ。

顧客の来店頻度を高めるためには生鮮食品を扱う必要があるが、それでは業務スーパーの強みが活かせなくなる。「商品点数」と「廃棄量」を増やすことになるからだ。

業務スーパーの競合にコストコがある。両社の特徴は、わざわざ足を向けさせる吸引力があるというものだ。ただし、顧客が日常的に通う場所ではない。

業務スーパーの顧客は目的を持って来店するため、通常のスーパーよりも商圏が広くなりやすい。

過剰な出店が顧客の奪い合いという、命取りにつながりやすいのだ。コストコの国内店舗数は36であり、数が多くないことがそれを物語っている。

品数“厳選”勝負で業績好調の「業務スーパー」が抱える2つのジレンマ…ユニクロやニトリに類する神戸物産のビジネスモデル_4
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外食・中食事業の営業利益率が7%を超える

神戸物産はビュッフェレストラン「神戸クック・ワールドビュッフェ」、焼肉店「プレミアムカルビ」、惣菜店「馳走菜(ちそうな)」を展開している。

2024年10月期の外食・中食事業の売上高は前年の1.3倍の141億円、営業利益は2倍の10億円に急拡大した。営業利益率は7.3%だ。

プレミアムカルビはフランチャイズ化に向けて本格的に動き出し、現在の店舗数は22だ。

神戸物産は基本方針と戦略のトップに「外食・中食事業の拡大」を掲げている。

中長期的な拡大を目指すにあたって、事業ポートフォリオの拡大に動く神戸物産の戦略はスマートだ。

生鮮食品はドラッグストアが扱うようになり、市場には過熱感がただよっている。

この領域を強化したドラッグストア「ウエルシア」は食品の売上が全体の2割まで高まったものの、売上総利益率は18.5%と高くない。カテゴリー全体では30%を超えているのだ。

神戸物産の外食・中食事業は今のところ堅調。今後の成長には外食のフランチャイズ化が一つの山場となりそうだ。

取材・文/不破聡 写真/Shutterstock