「店頭で『売ってるタイミングに遭遇できたらラッキー』って感じですね」
都内のスーパー。米コーナーには「1家族様2点まで」という販売制限の張り紙があるが、棚に品はほとんどなく、コロナ禍初期のマスクのコーナーを思わせる光景だ。
レンチン用のパックの米を並べたり、別の商品で埋めて米コーナー自体をなくした店もある。
大型スーパーの店員は「いつ入荷するかわかりません。不定期で突発的に若干入ってきたりしますが、本当にまれにという感じです。新米が9月半ばに入ってくるので、まだ1ヵ月くらいは今の状況が続くと思います。需要があるうちにたくさん売りたいのはやまやまなんですけど(笑)、問屋が卸してくれないんですよね。どこのスーパーさんも入荷できない状況です」と話す。
業務用スーパーの担当者も「今出しているのはタイ米ともち米だけです。普通のお米は次回いつ並ぶのかもわかりません。うちは米の取引業者が2、3社あって週3回入荷日があるんですけど、発注できても10個発注して2、3個しか入らないような状況です。入荷して店頭に並ぶ時間は日によってまちまちなので、お客様が店頭で『売ってるタイミングに遭遇できたらラッキー』って感じですね」という。
小学生の娘を持つ40代の主婦は「やっぱり主食なので、ないと困りますよね。最悪、家になければ定食屋とか牛丼屋に行けばお米は食べられるけど、ニュースを見てるとお店すらお米を確保できないんじゃないかってくらい危なそうじゃないですか」と困惑気味だ。
しかしこの女性は「でも1ヵ月くらいで解消するって話なので、たまに麺とかをはさめばしのげると思います。冷やし中華とかそうめんとか冷たいうどんもよく食べるし、そんなに悲観してません。ウチの子もお米じゃなきゃ嫌だってタイプではありませんから」とも言い、他にも食べるものはあるという。
実際のところ、米はいつ商品棚に戻ってくるのか。
政府の統計では、昨シーズンの米の生産量(昨年7月から今年6月末まで)は、玄米ベースで粒の径が1.85ミリ以上ある主食用米や加工用米が696万トンで、前年から横ばいだった。だが粒がこれより小さく、業務用の弁当などに使われる米が32万トンと、前年より19万トン減った。その原因は夏の高温にあったとみられる。
「暑いと米が成長しすぎて中に栄養が入らず、中身がスカスカな状態になることがあります。こうなると粒は大きくなりますが、中が詰まっていないので精米するときに砕けてしまって食用にならないものが出てきます」と農林水産省で米を扱う農産局企画課の担当者は説明する。
中がスカスカな粒ができたため、粒が大きい696万トンの米のなかでも主食用米の691万トンから取れた精米の量も減った。「わかりやすくたとえると、普段なら100の精米を取るために110の玄米が必要なところ、120が必要になるという状況です。昨年の米でこうした現象が起きました」(同担当者)