「本物」は県が保有しており真偽の確認はすぐにできるはずだが…

そしてこの理事会の前日、Aさんは自死している。「彼は文書の内容が出回っていることに苦しみ、百条委の動きを見ていました。文書の提出が認められない見通しを彼が持てていたら、別の選択をしていたかもしれません」と知人は話す。

その後、百条委が疑惑の真偽に結論を出す前に、斎藤氏がAさんの告発に適切に対処せず県政を混乱させた、という別の理由で9月に県議会に不信任決議案が可決され、失職しての出直し選挙での再出馬を選択した斎藤氏は再選され今に至る。

Aさんの私的文書はこの選挙でまた蒸し返された。

「自分は当選を目指さず斎藤氏を応援する、と言って立候補した立花孝志氏が、斎藤氏の街頭演説の直前や直後に同じ場所で演説を繰り返し、Aさんの私的文書の“内容”というものを公言しました。その延長で今回、SNSで“文書の中身”だとみられるものの公開を始めたのです」(在阪記者)

兵庫県知事選ポスターの掲示板。左下が立花孝志候補のポスター(撮影/集英社オンライン)
兵庫県知事選ポスターの掲示板。左下が立花孝志候補のポスター(撮影/集英社オンライン)

斎藤氏は9月に知事を失職する前、私的文書の内容についてある程度報告を受けたことを示唆する発言をしている。

「このため斎藤氏は立花氏の主張に事実でないことが含まれることを認識していた可能性があります。しかし、今に至っても立花氏の言動を問題視する発言はしていません」(同前)

一方副知事を辞めた片山氏は10月に百条委で証人として尋問を受けた際、Aさんの私的文書の内容を聞かれてもいないのに話し始め、奥谷謙一委員長に制止された。

その後、片山氏は代理人を通じ、文書の「調査が必要」とする要望書を県議会議長に提出したと、維新の増山県議がSNSで明らかにした。

今回、集英社オンラインは片山氏に「大逆転や!」との発言の真意を問う質問状を送ったが、期限までに回答はなかった。

11月18日、兵庫県議会百条委員会に出席した増山誠県議(左)と岸口実県議 (撮影/集英社オンライン)
11月18日、兵庫県議会百条委員会に出席した増山誠県議(左)と岸口実県議 (撮影/集英社オンライン)
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文書の公開にこだわる片山氏と維新。そしてそれらしいものをさらし始めた立花氏。斎藤氏は2日、今回の事態について「(立花氏が公開したものが)私自身は本物かどうか承知していません。県としては事実関係も含めて確認をしていくために、第三者機関の設置も含めて検討していきたい」とだけ話した。

だが「本物」は県が保有しており真偽の確認はすぐにできるはずだ。

「Aさんや周辺の人々の尊厳が蹂躙された状態が続いている」(フリージャーナリスト)との指摘が出る中、なぜ斎藤知事はこの事態をすぐ是正しようとしないのか。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班