「不法移民」のままなら安く使える

したがって、いかに「人権尊重」という衣を着てはいても、こうした大量の不法移民の受け入れの本当の目的は彼らを雇うことによる特殊な利益が直接的には企業家たちに、間接的にはそれらの地の住民たちにあるのではないかと私には思われる。

彼らを完全に「アメリカ国民」にしてしまえば、「アメリカ国民」と同等の賃金を払わなければならなくなる、が、「不法移民」のままにしておけば安く使える。

したがって、彼らを追放してはならず、「不法移民」として滞在させるのがベスト、という制度である。

つまるところ、アメリカのために外国をいかにうまく使うかという目的から選択された社会制度であって、種類は違っても貿易や外交、軍事で日本がうまく使われているのと同じである。

ただし、この点ではトランプはこの「人権尊重」よりも彼らによって雇用が奪われるアメリカ国民の側の利益を代弁しようとした。カマラ・ハリスを筆頭とする民主党側とはここが違っていたのである。

「不法移民のままなら安く雇える」アメリカの総人口の3%・1100万人にも達する不法移民をめぐる人権尊重と自国本位のアンビバレント_3
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こうして考えると、本当のところ、「自国本位」なのはトランプだけではなくカマラ・ハリスを含む民主党の側でもあった。トランプは「アメリカ・ファースト」という言葉を掲げて「自国本位」を明示したが、明示をせずに「世界に貢献」といっている側も本当は「自国本位」であった。

今後にもし民主党政権が復活したとしてもその本質が変わらないこと、そんなアメリカに今後も変わらず従属して良いかどうかを問いたいのはこのためである。

写真/shutterstock

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大西 広
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