「不法移民のままなら安く雇える」アメリカの総人口の3%・1100万人にも達する不法移民をめぐる人権尊重と自国本位のアンビバレント
今回の米大統領選で主な争点のひとつとなった不法移民問題。経済学者の大西広氏は選挙が迫った2024年9月にアメリカを視察。その際、移動時に乗車したバスが「不法移民の有無」のチェックを受け、この問題の深刻さを身をもって体感したという。
書籍『反米の選択 トランプ再来で増大する“従属”のコスト』より一部抜粋・再構成し、アメリカの不法移民問題について考える。
反米の選択 トランプ再来で増大する”従属”のコスト #2
「不法移民」のままなら安く使える
したがって、いかに「人権尊重」という衣を着てはいても、こうした大量の不法移民の受け入れの本当の目的は彼らを雇うことによる特殊な利益が直接的には企業家たちに、間接的にはそれらの地の住民たちにあるのではないかと私には思われる。
彼らを完全に「アメリカ国民」にしてしまえば、「アメリカ国民」と同等の賃金を払わなければならなくなる、が、「不法移民」のままにしておけば安く使える。
したがって、彼らを追放してはならず、「不法移民」として滞在させるのがベスト、という制度である。
つまるところ、アメリカのために外国をいかにうまく使うかという目的から選択された社会制度であって、種類は違っても貿易や外交、軍事で日本がうまく使われているのと同じである。
ただし、この点ではトランプはこの「人権尊重」よりも彼らによって雇用が奪われるアメリカ国民の側の利益を代弁しようとした。カマラ・ハリスを筆頭とする民主党側とはここが違っていたのである。
こうして考えると、本当のところ、「自国本位」なのはトランプだけではなくカマラ・ハリスを含む民主党の側でもあった。トランプは「アメリカ・ファースト」という言葉を掲げて「自国本位」を明示したが、明示をせずに「世界に貢献」といっている側も本当は「自国本位」であった。
今後にもし民主党政権が復活したとしてもその本質が変わらないこと、そんなアメリカに今後も変わらず従属して良いかどうかを問いたいのはこのためである。
写真/shutterstock
反米の選択 トランプ再来で増大する”従属”のコスト(ワニブックスPLUS新書)
大西 広
2024/11/29
1,045円(税込)
224ページ
ISBN: 978-4847067105
《緊急出版》
ドナルド・トランプ氏の大統領「再登板」により、アメリカから日本への要求はエスカレートする! 25年以降、日本はどのように振り回されてしまうのか――
・ドル円レートはトランプに握られる
・日本の軍事予算「対GDP比倍化」の約束が厳格なものとなる
・日本人が外国人の「使用人」となる未来
・「対米従属」の結果潰されてきた日本の産業たち
・アメリカが「衰退の一途を辿っている」といえる理由
など、決して私たち一般の日本国民にも無関係ではない米大統領の交代について、過去のアメリカによる「日本経済破壊の歴史」を交えて徹底的に分析し、私たち一人ひとりが自立するための方法を提言する一冊。