「次の作品をまた読んでもらえる作家」として終わらせたい
――それは、当初考えていたよりも深いものを抱えているキャラクターだと気づいた結果ですか?
「いろんな出来事があったせいで、いろんな心情が生まれてしまった」というか。それによって、内側に抱えている心情の動きが複雑化していった印象です。それを読者に見せなかったのは不親切なところもあると思いますが、それは僕が『【推しの子】』でやりたかったことの一部でもあります。
――ここ数年、『エヴァンゲリオン』や『進撃の巨人』『呪術廻戦』など、巨大コンテンツの最終回が続いているように思います。『【推しの子】』もそれに連なる作品だと思いますが、そうしたビッグコンテンツの終わらせ方について気にかけていた部分はありましたか?
「短く終わる漫画が増えたな」とは思っています。消費の早い業界の中で、「おもしろい作品」として終わりたいという思いが強いのかなと。その中で自分の好きなタイミングで終わらせられるようになったり、やりたい終わらせ方で終わらせられるようになったのは、作家としては「いい時代になったな」と思っています。
『【推しの子】』については「アニメが続く限り原作を続けたい」という気持ちもあるんですけどね(笑)。
――それは意外でした(笑)。
でも、メンゴ先生もいるので。僕らは「次の作品をまた読んでもらえる作家」としてやっていきたいと思っているので、そのためには、やっぱり最後までおもしろくないと。
――以前のインタビューでは「メンゴ先生を『【推しの子】』で長く拘束するのには気後れがある」といった旨の発言をしていましたよね。
もちろんそれもあります。メンゴ先生は一人で描ける方なので。『【推しの子】』はそもそも僕がメンゴ先生に頭を下げて、お願いして始めた部分がありますから。なので、『【推しの子】』はそういう点では「僕の自分勝手」と思っている部分はあるんです。
だからこそ、おもしろい作品であるうちに終わらせないといけない。「読者にとっても、メンゴ先生にとっても、いい作品で終われるようにしたい」という気持ちはずっとありました。