宣言通りロシアとウクライナの停戦なるか

世界的情勢が揺れる今、日本はどのように動くべきなのか。

「日米関係は重要です。石破氏は日米地位協定の改定を掲げてきましたが、トランプ氏を前に、どのように水をむけるのか。石破氏の交渉力が問われます。今後、トランプ政権では貿易政策として日本を含む外国から輸入される製品に原則10〜20%、中国には60%の関税をかける方針と言われています。

また、IPEFなどの国際協調の枠組みからの離脱の意向を示すなど、反国際協調の姿勢を強めていくとみられます。

原理原則もなくアメリカに追随せず、どのように国際協調を打ち立てていくか。ときに、アメリカに粘り強く国際規範を守るように訴えるような外交も必要でしょう。交渉力に加え、構想力も問われそうです」

石破首相の交渉力は…(本人Xより)
石破首相の交渉力は…(本人Xより)
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かつてのように、アメリカ協調の名の下で、アメリカを全肯定していればいい時代は終わったのだ。

「『日米同盟は不公平だ』というのがトランプ氏の持論です。トランプ政権は、防衛費について、GDP比3%かそれ以上を求めてくるとも言われています。強まる要求に、日本としてどう対応するのか。早速、問われる局面が訪れるかもしれません。

それに応じるのか、ということを日本も石破氏任せにはせず、国民を交えて議論をしていく必要があります」

今後、前述の貿易政策のほか、環境対策も気になるところだ。バイデン氏が注力していた、EV=電気自動車推進の政策について、トランプ氏は批判的な発言をしてきた。継続するのかは不透明である。

また、トランプ氏はエネルギー価格引き下げのために、石油や天然ガスなどの化石燃料の増産を支援し、海外への輸出を増やす考えを示している。

そして、最も注目されるのが「就任する前に解決をする」と提言していたロシアとウクライナの停戦へ向けトランプ氏がどのような動きを見せるのか、である。

三牧氏は、「まだ読めない。トランプ氏がどのように動くのか未知数です」と言う。

勝利宣言の演説で、戦争の終結を語り「約束をすればそれを守る」と繰り返していたトランプ氏。その言葉を信じ、動向を見守っていきたい。

取材・文/山田千穂 写真/shutterstock


三牧聖子
同志社大学大学院准教授。1981年生まれ。米国政治外交史、平和研究。著書に『Z世代のアメリカ』(NHK出版新書)など。共著に『私たちが声を上げるとき』(集英社新書)がある。