新社長が繰り出した直球勝負の効果は?

もともと、ダウンロード型への移行が顕著だったゲーム業界で、パッケージ型のものは時代遅れのものとなっていた。

メーカーも原価がかかるパッケージ型からは手を引き、ダウンロードのみで販売することも珍しくなくなっていた。

家電量販店にとっても、ゲームは低粗利であるために旨味が薄い。このカテゴリーへの依存度が高い状態が続けば、中期的な苦戦を強いられるのは明らかだった。

ゲーム売り場。写真はイメージです 写真/Shutterstock
ゲーム売り場。写真はイメージです 写真/Shutterstock

そこでコジマは、下期に大型白物家電やテレビなどの高付加価値商品の販売強化に乗り出す。

2023年10月には「上板橋研修センター」を新設。接客や基本行動、商品の提案方法などを体系的に学ぶ研修コースを設けた。選任の講師が、コロナ禍による生活スタイルの変化、光熱費の高騰、脱炭素化に向けた社会情勢などを踏まえたうえで、提案力を高める接客術を伝授するというものだ。

折しも、家電業界は変革が求められていた。それが「指定価格制度」である。

この制度は、メーカーが指定した価格で販売する一方、売れ残りの返品を可能にする仕組みだ。パナソニックは2020年度から洗濯乾燥機などで試験的に導入しており、2022年度からは対象商品を広げ、2023年には日立も導入した。

指定価格制度は、過度な値下げ競争を行なう家電量販店へのメーカー側からの牽制だ。量販店の値引き合戦は苛烈で、一部の商品は4割引などで販売されることも珍しくない。

メーカーは値崩れを防ぐため、高頻度のマイナーチェンジを繰り返す。しかし、これが在庫処分という名の値引きに使われることとなり、更なる利益圧迫の要因となっていたのだが、この指定価格制度の導入によって、こうした商習慣が是正されるのだ。

しかし、ここで打撃を受けるのは、「値引き」という伝家の宝刀が使えなくなった販売員だ。

顧客が商品を購入して生活の中で生じるメリットを説明しきらなければならない。本質的な接客力が求められるようになったのだ。

社長交代や業績の低迷、家電量販店を取り巻く環境の変化。コジマはさまざまな歯車が回る中で、粗利率が高い白物家電の販売力・接客力強化という直球勝負に出た。