「いつまでも昔の肩書き自慢をしているのはダメ」

――『ほがらか脳のすすめ』の「おわりに」で茂木先生は「人間はすべて、天才である」と書かれています。とてもポジティブなメッセージですね。

茂木健一郎(以下同) 子どものときってみんな天才だったと思うんですよね。まわりの子どもを見ていても思います。それが、大人になるにつれてだんだんくすんでゆく。「二十歳過ぎればただの人」っていうのは、全員にいえることなんです。

じゃあどうしたら子どものままにすくすくと育ってゆけるのか。それが大きな命題です。だから、ひふみん(加藤一二三)が特別な人だっていう前提でこの本を読むと、いちばん大事なメッセージは届かないかもしれません。

もちろん将棋に関してはひふみんほどの才能がみんなにあるわけではないけど、それぞれの道で、なにかしらあると思うんですよ。それをいかに伸ばすかっていうヒントを、ひふみんの天才脳から受け取ってもらえたらうれしいです。

実際の対談の様子
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――若さを保つ秘訣として、茂木先生は「脳が若いときになにをしているか」を考えることを薦めていますね。それはつまり「学ぶこと」だと。

学ぶことだったり、新しいことに挑戦したりしていくこと。ひふみんがやっぱりすごいと思うのはあの好奇心ですよ。80歳すぎていろんなバラエティ番組に出てますから。それから将棋だけではなく、カトリックの信仰や、クラシック音楽とか、おどろくほど広い世界観を持ってるでしょう。しかもそれが全部、将棋に関連づいている。

個人差はあると思いますが、年とともに考え方がこりかたまってしまった人もいますよね。そういう人が定年退職すると、急に落ち込んだり、ふけこんだりするので注意が必要です。あとは、いつまでも昔の肩書き自慢をしてたり、逆に若い人でも偏差値・学歴自慢してたりするのはダメです。