「頑張っても他の人と同じになれない」
文部科学省が2021年に有識者会議を発足したり、昨年は漫画『ギフテッド』がドラマ化されたことでも注目を集めた。認知は進みつつも、「才能教育」に対し未だ発展途上の日本で、彼らはどんなことを思っているのか、ギフテッドの男女4人に語ってもらった。
――4人はいずれもIQの上位2%が入会の条件となる「MENSA」会員の方々ですが、自身のギフテッド性に気付かれたのはいつ頃だったのでしょうか。
立花奈央子(以下、立花) 私は今年で42歳なんですが、36歳で知能検査を受けて気が付きました。子どもの頃は話が合う人がいなかったし、ずっと自分はアホな子だと思っていました。学歴も高卒です。ただ仕事で出会ったMENSA会員の方が、私の話し方や経歴から「MENSA入れると思うから受けた方がいいよ」と言ってくれて。その時は「いや、そんなことねえだろ」と入会試験こそ受けませんでしたが、紆余曲折あって後でWAIS(知能検査)を受けて自分の特性に向き合うことができ、ようやく腑に落ちました。
加藤貴大(以下、加藤) 僕も検査で気づきました。小学生の頃からいわゆるIQパズルは得意でしたが運動ばかりで学校の成績もよくなかったので、大人になって改めてWAISを受けて…という感じでしたね。
梶塚チハル(以下、梶原) 僕はどちらかというと「頭がいいのは恥ずかしい」ってイメージがあって。そういうことは封印しがちだったんですが、50歳過ぎて友人が「MENSA」の会員で、話を聞いて受けてみようかなって受けたのがきっかけですね。
春間豪太郎(以下、春間) 僕も検査でしたね。小さい頃からどれだけ頑張っても他の人と同じになれないのがすごくコンプレックスで。「なんで人と同じことができないんだろう、僕はダメな奴だ」ってずっと思っていて。親も同じことを考えていたのか、16歳のときに病院に連れていかれてそれで…という感じでした。
――どんな学生生活を送られてたんですか?
立花 女子同士って、みんなと同じことをしなきゃいけない感じがゆる~くあるんですけど、みんなが好きだと言っているアイドルの話題や集団行動にどうしてもなじめなくて。テレビもドキュメンタリー以外おもしろくないし、興味のある分野のレイヤーがごそっと違っていて、いつも疎外感を感じていました。頑張って興味を持とうと振る舞っても、何がいいのかわからない、逆に自分がいいと思っているものは理解してもらえないっていうのがずっとあって。
加藤 先生ともなじめなかったな~。先生の期待する小学生らしい振る舞いができない。ある授業で、チューリップの球根を植える際に、赤と黄色の花が咲く球根をどちらか選ばされて、「どうして見かけは同じなのに色がわかるんですか」って疑問や自分の考えを投げかけていたら「うるさい、早く埋めろ」って(笑)。
立花 ありがち。超あるある。
――あるあるなんですか⁈
梶塚 教育に関してはありますよね。ある種、一つの回答が決まっているんですけど、それに対して自分なりに考えた回答をぐっと押さえつけられた経験を持っている人は多いですね。
春間 大学に通っていても未だに思ったりしますよ。立花さんが言ったみたいに、みんなとの視点がすごく食い違っていて。子どものときは自分自身でもそれに気づけてないし、修正の仕方もわからない。自分が思っていることを言えば言うほど、目の前の人の顔が歪んでいくんですよ。悲しいほどに。
一同 わかる~!!
――そんな中でどう学校生活に適応されていったんですか?
加藤 僕は小学生の頃は問題児で終わってしまったので、中学ではルールを作る側に回りました。学校でやりたい活動ができないなら作っちゃえばいいやって。生徒会長になって地域と学校を結び付けたり。
梶塚 ルールを作る側に回るのは一つの選択肢としてやっている人多いかもしれない。
春間 僕は学校に行かない方を選択しましたね。できるだけ休みました。
立花 私の時代は不登校って選択肢がそもそもなくて。そのかわり、学校外の活動をめちゃくちゃしてました。小学5年生のときから手探りで同人誌を作り始めて、オタク活動を通じて大人にいっぱい遊んでもらったことでだいぶ救われましたね。親にはとても心配をかけましたが……。