消費税の還付を利用した詐欺も
高級時計の購入先は、もちろんネット通販だけではない。韓国では、あちらこちらに偽物の時計やカバン、財布などが販売されている。近年の韓国ブームも相まって、詐欺ではなく個人で使用するために、金額的にちょうどよい偽物を買う観光客も増加しているようだ。
今年3月24日、韓国関税庁(KCS)が2018年〜2023年の5年間に押収した偽ブランド品を公表。それらを正規品の価格にすると、約2兆1000億ウォン(約2400億円)に達することがわかった。これらは韓国で販売されているものだが、製造ルートを調べてみると、中国産が約1兆8000億ウォンと大半を占めるという。
韓国・東大門にあるデパートの一角で偽ブランド品を販売する店の店長A氏は、「日本人の中でも、意外な人が買っていく」と語った。
「コピー商品は、一般的に高級時計が欲しくても買えない学生やフリーターなどが購入すると思うでしょうが、意外とお金持ちのお客さんも多いんです。うちの場合、時計は3万円から、高くても10万円しないくらい。ロレックスの『デイトナ』はダントツ人気で、あとはパテック・フィリップ『ノーチラス』、オーデマ・ピゲ『ロイヤルオーク』などは定番で売れますね。
さらに、うちは自社工場で作っているハイクオリティな時計やカバンも扱っています。そのぶん、ほかの偽物と比べて値段は倍以上するのですが……。銀座でスナックを経営するママさんが来店した際に、『偽物でいいのか?』と聞いてみたら、『もう本物のエルメスのバーキンを2個ほど持っているから、あとは偽物でもいいかな』と、いくつか買っていきました」
さらに、高級時計を使った詐欺は、偽物の売買だけでない。時計商は、次のように語る。
「高級時計は、消費税の還付を利用した詐欺に使われていることが多いです。簡単に説明すると、国内から海外に商品を輸出すると、仕入れ時の消費税は全額還付されます。その制度を利用し、日本で仕入れた高級腕時計を香港の関係会社に輸出して還付を受けます。
しかし、その後、実際には現地では販売せず、密輸入で日本に戻すんです。もっと悪質なのは、時計屋が修理品として預かった第三者の時計を、海外に勝手に送ることもある。こうしたことが、ざらに起きている界隈なのです」
先述のとおり、技術の進歩により、本物と偽物の見分けがつきにくくなっているというロレックス。大きな損害を被らないよう、購入の際には詐欺や強盗に十分に注意してほしい。
取材/文 集英社オンライン編集部ニュース班