亡くなった二人や県民のために涙を流すべきでは?

だが、知事の涙は何かが違う、との雰囲気も会見室には同時に漂った。

周知のとおり、兵庫県政の今回の問題を巡っては、元西播磨県民局長・Aさん(60)が3月12日に斎藤知事や側近の違法行為疑惑を告発する文書を県議や警察、メディアに送ったことが発端だ。

公益通報者として保護されたうえで、告発内容は調査されなければいけなかったが、この文書の内容を把握した斎藤知事の号令のもと、“犯人探し”で摘発されたAさんが報復人事を受け、7月に自死に追い込まれている。さらに、Aさんが告発した違法行為疑惑のひとつに絡み、別の県課長Bさん(52)も4月に自死している。

斎藤知事の涙は、明らかにこの二人のために流したものではなかった。さらに斎藤知事が泣きながら話を続ける。

「自分自身に悔しい思いではあります。でもあの、その先生方も、心から今も、感謝はしていますので。はい。ほんとに申し訳ないという思いで私自身は今、います。すんません」

聞けば、自分自身のふがいなさが悔しくて泣いていると言う知事。ほとんど理解を超える説明に、記者会見室には困惑した空気がみなぎった。そこで記者団からは念のため、“涙の真意”を確認する質問が出た。

7月に涙を流した片山元副知事(写真/共同通信社)
7月に涙を流した片山元副知事(写真/共同通信社)
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斎藤知事の命(めい)を受けて、告発文書を書いた人物の割り出しの先頭に立ち、Aさんを脅しつけるように尋問した当時の片山安孝副知事も、7月に辞職すると表明したときに涙を流すふりをしているが、このときも片山氏は「なんで知事を支えられへんかったんか、それが悔しい」と言ってのけ、直前に自死したAさんに思いを寄せることはなかった。

このときと同じような居心地の悪い泣き姿を見せられた記者団からはその後、「亡くなった二人や迷惑をこうむっている県民のために先に涙を流すべきではないんですか」との詰問が続くことになった。

知事の涙を見て「いよいよ観念して、不信任決議案が通れば辞めるのではないか」との観測も早くも県庁内では出ている。だが知事の胸中を測るには材料が少なく、この先、知事が県議会の三行半に素直に従うか、逆ギレして解散を選ぶかは予断を許さない。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班