「こういう状況になったということは申し訳ないな」

そこで質問は当然、「不信任案が可決されれば知事職を退くのか、議会を解散するのか」というところに進む。斎藤知事は「地方自治法に基づいて判断する」と言い続け、答えようとしない状況が続いた。

驚愕のシーンは、会見が1時間を過ぎたころのこと。県政担当記者が、3年前の知事選で自民党が割れ、その一部が斎藤知事を担いだ経緯を挙げながら「明日(12日)の辞任要求をする議員の中には、3年前に知事を担いだ人もいる。どう受け止めるか?」と質問した。

これに数秒間沈黙した斎藤知事は、「まああの、申し訳ないという思いですね。3年前に会派を割って、本当に重い決断をいただいた。その先生方の重い決断の中で、私に対して出馬要請をしていただいたと。そこで私も一緒にやりましょうということで決断しました。それで知事選挙に勝たしていただいて知事に就任して、これまで一緒にやってきたというところです」と、まず自分は自民党に勝たせてもらったとの思いを口にした。

ドッチラケになった会場(撮影/集英社オンライン)
ドッチラケになった会場(撮影/集英社オンライン)

さらに「それで私としては…、自分がやれる政策とか公務を、先生方のアドバイスとかも、まあ十分受け止められなかったところもあるかもしれないですけど、当時、兵庫自民という会派でおられた中で、一緒にやっていこうと。議会が終わるたびに会派の控室も行きましたけど、そこで『がんばれよ』という風に当時も言っていただいてたんで、そこはまあ…」と、この3年間の県政与党との関係を振り返り始めたのだが、ここで突然鼻をすすり上げだした。

「大変あの、申し訳ないな…、と。こういう状況になったということは申し訳ないな、と」

目にはみるみるうちに涙がたまり、声が上ずった。

県議会調査委員会(百条委)での県議からの追及に対しても弁舌巧みに切り抜けてきた斎藤知事は「AIか」と陰口がたたかれるほど感情の揺れを見せない人物だったが、突然の感情の吐露に記者団は驚き、激しいシャッター音が会見室に響いた。