自民党の国会議員からは人気がない理由
8月21日夜、国会議事堂から徒歩10分ほどの距離に位置する赤坂の議員宿舎で、高市早苗氏は自らを支援する国会議員らに呼び掛けた。
「一緒に戦ってほしい」
総裁選をめぐっては、すでに若手中堅から小林鷹之氏が立候補を表明。他にも石破茂氏や河野太郎氏、林芳正氏、小泉進次郎氏が出馬を決めたと報じられているが、ついに高市氏も立候補への道筋をつけたようだ。
会合に参加した議員は「来週中に出馬に関する決意表明があるのではないか」と報道陣に明かした。
高市氏は自民党を支持する保守層からの人気が高い。それは情勢調査の数字にも表れている。
日経新聞とテレビ東京が岸田文雄首相の退陣表明を受けて21、22日に実施した緊急世論調査では、次の自民党総裁にふさわしい人物として、トップが進次郎氏23%、次点が石破氏18%、3位に高市氏11%が続いた。
ただ、これは支持政党に関係なく集計した結果だ。対象を自民党支持層に絞ると、トップは進次郎氏32%で変わらないが、次点は高市氏15%、3位が石破氏14%と、2位と3位が逆転した。
自民党支持層からの人気が可視化された形だが、一方で高市氏には「党内基盤が弱い」という弱点もある。実際、総裁選立候補に必要な国会議員の推薦人20人を集めるのに苦戦し、一時は出馬が危ういともみられていた。
なぜ、自民党支持者からの人気が高い高市氏が、党内での仲間集めに苦労するのか。その背景には、高市氏が抱える個人的な事情がある。
もともと高市氏は自民党の中でもタカ派の名門派閥、清和会に所属していた。
そこに転機が訪れたのが自民党野党時代の2011年。当時会長を務めていた町村信孝氏が翌年の総裁選へ立候補する意欲を示した。
高市氏は次の総理総裁としては安倍晋三氏を担ぐことを心に決めていたため、このまま清和会に残るのは「不義理になる」と考え、派閥を離脱。無派閥となり総裁選では安倍氏の推薦人となった。
ただ、このとき、清和会に残りながらも町村氏ではなく安倍氏を応援した議員は多数いた。
実際に、推薦人代表には下村博文氏がなり、ほかにも稲田朋美氏、柴山昌彦氏、礒崎陽輔氏、世耕弘成氏、西田昌司氏が清和会から名を連ねている。
自民党関係者は「派閥を抜けなくても安倍氏を応援することができたが、我の強い高市氏はわざわざ離脱する形を取った。それを『派閥の和を乱した』と否定的に捉えている清和会の議員は一定数おり、いまだに派閥と溝がある原因となっている」と語る。