「虚偽の文書作成を認めた」は兵庫県のでっちあげ
3月12日、当時の西播磨県民局長Aさん(60)は、知事や側近グループの違法行為疑惑を記した告発文書をメディアや県議、県警関係者ら10人に郵送した。
挙げられた7つの疑惑の中に、片山副知事(今年7月末に辞職)が司令塔となって信用金庫への県補助金を増額し、それを協賛金としてキックバックさせ、優勝祝賀パレード費用に充てたとするものがある。文書には「パレードを担当した課長はこの一連の不正行為と大阪府との難しい調整に精神が持たず、うつ病を発症し、現在、病気療養中」とも書かれていた。文書が出た後の4月、このパレードを担当した課長Bさん(53)は自死している。
「告発文書には斎藤知事がパワハラやたかりを繰り返しているとの指摘もありました。実際にパワハラは、知事は『犯意』を認めないものの、県職員相手に繰り返されていたことが明らかに。知事側近の産業労働部長がコーヒーメーカーを企業から受領したことも発覚しました。これは収賄の疑いがあります。告発文書の内容は徐々に事実である部分もわかってきています」(フリージャーナリスト)
Aさんは告発文書送付の時点から、公益通報者保護法で県が不利益を与えてはならない立場になったとの見方が強い。ところが、斎藤知事は3月20日にこの文書の内容を知人から聞いて把握すると、疑惑の指摘を受けた当人なのに「事実と異なる記載が多々ある」と翌日に片山副知事らに「調査、対応」を指示したと説明している。
片山副知事がAさんから公用パソコンを取り上げ、中に告発文書のデータがあることを確認すると、3月27日には斎藤知事が記者会見で「嘘八百」「公務員失格」とAさんを非難。斎藤知事らはAさんが3月末で望んだ定年退職を許さず、5月7日に停職3か月の懲戒処分を科した。
Aさんへの攻撃はこれにとどまらなかった。
「処分後も、Aさんのパソコン内にあった私的なデータを県総務部長が県議らに見せて回りました。県議会では、斎藤知事を3年前の知事選で推した維新の岸口実県議や増山誠県議がデータをすべて公開せよと要求を続けたのです。その先の7月7日、Aさんは遺体で見つかりました。自死とみられています」(県関係者)
斎藤知事は8月7日の会見で、告発文書の存在を知ったときは公益通報者保護法のことは念頭になかったと認めた。一方で、片山副知事が3月25日に聴取を行ない、そこでAさんが「噂話を集めて当該文書を作成し、配布したということを認めた」との報告を受けたとし、これを大きな根拠にAさんは保護対象ではないとの自説を開陳した。
だが斎藤知事は、3月25日に行なったとする聴取の2日後である3月27日の会見で、Aさんが文書作成を認めたことと、自身の「虚偽内容が多々含まれている」との主張を勝手に組み合わせて「ありもしないことを縷々(るる)並べたような内容を作ったっていうことを(Aさん)本人も認めてますから」と発言している。Aさんが「認めた」とする行為の対象をでっち上げたこの事実は、7月24日の記者会見で集英社オンラインが質して発覚した。(♯4)