②グダグダの“ユルい笑い”が時代のカウンターとなっていた!

内村からのムチャ振りに芸人たちは必死で笑いを取ろうとするが、その即興コントなどのネタ自体が必ずしもおもしろかったわけではない。むしろめちゃくちゃスベッたり、場が荒れたりすることばかり。

けれど、そんなグダグダな状況にこそ内村は大笑いし、愛あるツッコミで“ユルい笑い”として成立させていたのだ。

今思えば、その“ユルい笑い”がウケたのは時代のカウンターだったからかもしれない。

人気企画だった「芸人引き出し王決定戦」をはじめ、『内P』ではさまざまなお題が与えられ芸人たちが即興コントを披露することが多かったが、『内P』スタート以前にはきちんとセットを組んで、ガッツリ作り込んだ台本で見せるコント番組が大ヒットしていた。

『ダウンタウンのごっつええ感じ』(1991年~1997年/フジテレビ系)や、内村が座長を務めていた『笑う犬』シリーズ(1998年~2003年/フジテレビ系)などは、かなり綿密に計算されて構築された本格コント番組だったのだ。

DVD『笑う犬2010~新たなる旅~DVD-BOX』(ポニーキャニオン、2010年12月1日発売)のジャケット写真。1998年10月14日にフジテレビ地上波でスタートした伝説のコント番組「笑う犬」シリーズは、「どうしてもコントがやりたい」という内村光良の一言から始まったそうだ
DVD『笑う犬2010~新たなる旅~DVD-BOX』(ポニーキャニオン、2010年12月1日発売)のジャケット写真。1998年10月14日にフジテレビ地上波でスタートした伝説のコント番組「笑う犬」シリーズは、「どうしてもコントがやりたい」という内村光良の一言から始まったそうだ

そんな本格コント番組がムーブメントを起こした後に放送開始した『内P』は、計算なんてする余裕のない芸人たちが、即興コントなどでむき出しの素を見せて笑いに昇華していた。

本格コント番組とは笑いを取ることへのアプローチが真逆だったわけだが、そんな“ユルい笑い”が、くしくも時代のカウンターとしてハマッたのかもしれない。