科学的にも証明されているオンラインゲームで怒りやすくなる状況
――これまでで、特に読者の反響が大きかったエピソードはありますか?
七海仁(以下同) コミックス8巻の精神障害者雇用編や、あとは実写ドラマの第3話で取り上げられているパーソナリティ障害編のラストなどは、反響がかなりあったそうです。
ドラマでは白石聖さんが演じてくださっている小山内風花というキャラクターは、激しい性格ですが、ある意味そこが魅力的に映ったのかもしれません。月子さんが生き生きとした風花を描いてくださったおかげもあると思います。
――そういった魅力的なキャラクターたちは、ビジュアルも含めてモデルにしている方がいるのでしょうか?
どちらの場合もあります。ただ、モデルがいる場合も、だいたいは1人の方というよりは、2人、3人の方を複合させて作っていることのほうが多いですね。
なるべく「こういう人いるよね」と多くの人に思ってもらえるような特別ではないキャラクターを真ん中に置いて話を作りたくて、そこがこの作品のチャレンジでもあり、面白さでもあると思っています。
あとは最近のエピソードでいうと、アンガーマネジメント編に男性からのアンケートが多く寄せられたみたいですね。みなさん、「これは俺だ」と思われたそうで(笑)。
――「怒りは人間が持つ感情の中で唯一、人生を壊す可能性を持っています」という弱井の言葉も強いですよね。アンガーマネジメントのトレーニングをしている男性が新しい趣味としてオンラインゲームを始めたと聞いたときは「それはやめて!」と思いましたよ(苦笑)。
たしかに(笑)。でも、ゲームも付き合い方次第なんですよね。前職時代にハーバード大学で脳科学を研究しているアメリカ人の教授から聞いたんですが、オンラインゲームで匿名同士が対戦したときに怒りやすくなる(易怒性が強くなる)ことは、科学的にも証明されているそうです。
「子供が知らない人との対戦ゲームに夢中になったら注意しないといけない」とおっしゃっていたことが、印象に残っています。
――ちなみに、このアンガーマネジメント編が収録されているコミックス11巻は他の巻に比べてちょっと厚いですよね?
「章の最後まで同じ巻に入れてほしい」と、わがままを言って収録してもらいました。9巻も新型コロナウイルス編を全編収録したいといって物議を醸したんですが、11巻を出したときに「これで最後ですよ」と言われてしまいました(苦笑)。
取材・文/森野広明
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