「片山宏一は渋谷家に引き取られ、兄は片山家に残るってことだった」
登記簿情報によると、3階建ての2世帯住宅が建てられたのは約21年前。義父母と実父の板挟みで長女たる片山容疑者の母親が苦しんだことは想像に難くない。
「舅、姑との関係が、そのうちに悪くなっていったんだろうな。昭ちゃんが『娘が可哀想だ、早く帰ってきた方がいい』なんて数年前に言っていた。離婚の理由は夫の病気での生活苦じゃないかって? そうじゃねえよ。建てた家の不具合に起因して始まった片山家と昭ちゃんのゴタゴタに巻きこまれたんだ。
それで結局離婚することになるんだけど、俺が聞いた話では今回事件を起こした片山宏一は渋谷家に引き取られ、宏一の兄は片山家に残るってことだった。でも、報道を見ると『片山』のままだから姓は変えてなかったんだな」
そして遠戚は、「ここからは推測だけどな」としながら、事件の動機につながる片山容疑者と「渋谷家」の埋め難い溝について、こう語ってくれた。
「そういうゴタゴタがあったから、もし宏一が菊川の家に戻ってきたとしても、今回の事件のあった昭ちゃんの家には住ませなかったような気がするんだ。あの家の敷地内には古い母屋みたいのが残ってて、そこに『1人で住め』みたいなことがあったんじゃねえかなって。
それで、その爺さんが建てた家のせいで家族がバラバラになったみたいなことを思ってたとしたら、不思議ではないなってな。だから今回の事件を聞いて、ふとエレベーターの不具合のことを思いだしたんだ」
可愛い娘とその家族のために職人として腕をふるったことが仇になったとしたら、こんなに悲しいことはない。しかし孫としてそのとばっちりを受けたとしたら、宏一容疑者と兄が鬱屈とした思いを抱えたとしても不思議ではない。片山兄弟と同世代の息子を持つ女性が、取材にこう語った。
「ウチも子供が男の子だったから片山君は小さい頃にお兄ちゃんと一緒に何度か遊びにきてましたよ。ウチではゲームしたりしてみんなで仲良く遊んでいましたね。私は小さい頃しか直接は知らないけど、ちょっと感情の起伏が激しいという印象はありました。
何かで目立つという感じでもないし、ものすごい明るいとかではないのですが、活発ではあって運動も勉強も普通よりちょっとできる、そんな印象の子でした。中学を卒業してからは県内の高校に進学したことは知っていますが、その後のことはわからないです」