旧統一教会が警戒する「3大悪書」とは

――3大悪書?

ええ。旧統一教会が教団を攻撃する書物だと内部で問題にしています。

一冊は小説家の柴田哲孝さんが安倍元総理銃撃事件をモチーフにして書いた「暗殺」(幻冬舎)というサスペンス小説。物語の冒頭は朝日新聞阪神支局を襲撃した赤報隊事件で、その背景に統一教会が出てくる。安倍銃撃事件ともつながってくるから、教団からすればとんでもないフィクションでしょう。それが売れている。

もう一冊が、私がこの5月に上梓した「誰も書かなかった統一教会」(集英社)。現役信者は私が2022年11月に韓国の教団本部に入ったことに驚いていました。さらにいえば柴田さんの小説に出てくる散弾銃「鋭和BBB」についても詳しく書いています。

そして3冊目が8月20日に刊行予定の樋田毅「旧統一教会 大江益夫元広報部長の懺悔録」(光文社)。ここでは教団の元広報部長が霊感商法、日韓トンネル、韓国への送金問題、赤報隊事件などについて生々しく証言しているといいます。教団はまだ原稿の詳細を知らないのに出版を非常に恐れている。

この懺悔録に教団はとくに警戒感を高めていて、「第2の世界日報事件が起きてもおかしくない」などと言う者までいるようです。間接的な脅迫だと言ってもいい。

「解散命令という“Xデー”に備え、教団内の緊張感は高まっている」有田芳生が語る”旧統一教会の現在地”_2

――世界日報事件とは1983年に旧統一教会系の政治団体である国際勝共連合のメンバー約100人が同じく教団系機関紙の世界日報本社ビルを襲撃し、多数の負傷者が出た事件ですね。

当時、世界日報は後に月刊「文藝春秋」で教団の闇を内部告発することになる副島嘉和編集局長のもと、教団の宗教活動とは一線を画す紙面作りを進めていたんです。

ところが、その編集方針に反発した教団側が勝共連合のメンバーに世界日報を襲撃させました。標的はもちろん、副島編集局長でした。

ただ、副島さんは別フロアの営業局にいて襲撃を免れましたが、編集局のフロアにいた記者10人が負傷し、渋谷署の警官80人が駆けつける騒ぎとなりました。ちなみに、この襲撃は文鮮明教祖の指示によるものだったと副島さんは証言しています。

副島さんはその後「文藝春秋」で告発しますが、発売6日前、自宅付近で何者かに刺されました。一時は生死の境をさまよいましたが一命をとりとめています。

旧統一教会の信者は概しておとなしくてまじめな人が多い。ただ、世界日報を襲撃した勝共連合メンバーのように、どこの組織にも跳ねっ返りのような人はいるものです。

解散命令というXデーを前に教団内の危険水域は上昇しています。教団側は解散命令をめぐる一連の動きを戦争ととらえているフシもあるだけに、ちょっと心配しています。