「月収20万円以上」の募集でも、実際は… 

–––実際のところ、歯科技工士の労働時間と収入はどれくらいなのでしょうか?

ほぼ無休で毎日夜11時以降まで働いて、そのうえ納期に追われているときは技工所に泊まりこんで作業して、稼げる月で月収60万円ほど。仕事の内容や発注が少ないと、月収30万円ほどになるときもあります。

それでも私は独立してやっているからマシなほうで、ラボなどに雇われている人はもっと稼げない状態です。技工士学校を卒業したばかりの子らの初任給は手取り14~15万円程度ですし、10年近く経験している30代の技工士でも、朝から晩まで働いて手取り17~18万円という人もいます。

募集の時点では「月収20万円以上」としている技工所でも、蓋を開けると出来高制で、ピンハネがひどいところも多い。「技工士をやっていると結婚もできない」と口にする人もいますね。

差し歯の製造作業(クレジットなし)
差し歯の製造作業(クレジットなし)

–––「技工士7割、歯科医師3割」という大臣告示は守られているのでしょうか?

「概ね7対3」と定められているといっても、それは技工士によって異なります。私の場合は、4割や3割しか技工料をもらえないこともザラにありますよ。元々が安く設定されてしまっているんですが、それでもきっちり7割もらえれば、だいぶマシになるとは思いますけどね。

ときどき「なんで技工士になんてなってしまったんだろう」って思います。私は人と接さないで黙々と作業するのが好きな性分なので、仕事内容自体は向いていると思いますが、いかんせん作業に対して儲けが見合わないですね。

それこそ日本で働くことを見限って、自由診療の米国に行った技工士もいますよ。日本だと歯科医師は技工士を下に扱って、言うことを聞くのが当たり前と思っている人も多いですが、米国だと対等な立場で接しているみたいです。