溢れる「背徳系」と「健康系」の油脂食品
マーガリンの分が悪くなった目下、世界で繰り広げられているのは「バター論争」だ。
2014年、ケンブリッジ大学が主導した大規模な研究プロジェクトで、長く悪者になっていた飽和脂肪酸の摂取と心疾患とのリスクには相関関係が認められないとの結果を発表した。
これによってアメリカのメディアは騒然となり、『TIME』誌はさっそく2014年6月23日号の表紙で「Eat Butter.」と高らかに宣言した。だが、トランス脂肪酸の弊害を指摘したウォルター・ウィレットをはじめ、すぐさま多くの専門家がこの研究結果に異議を唱える事態となった。
バターは悪者か、そうではないのか。結局のところ、論争は決着していない。半世紀以上を経て、話は振り出しに戻ってしまったのである。
文/澁川祐子 写真/shutterstock