「認知の流暢さ」のためにアップルのロゴは上部に載せるべき

商品のパッケージのデザインの際には、ロゴの配置も重要な決定事項でしょう。そのときのロゴの配置についても、商品の知名度によって場所を変えたほうがよいでしょう。載せる位置によって印象が変わります。

アパルナ・サンダーらの実験によると、アップルのような訴求力の高いブランドの商品だと、ロゴが下部よりも上部にあったほうが好まれました。反対に、あまり人気のないマイナーなブランドだとロゴが下にあったほうが好まれ、購買意欲も高まったのです。

これはテクノロジーの商品だけではありません。アメリカでも大人気のスターバックスも、ロゴが下部よりも上部にあったほうが好まれした。

これも、「訴求力が高い」イコール「優れている」という抽象的な概念を「ロゴの位置」という具体的なもので比喩して理解しやすくしている、概念メタファー理論です。

このように、商品や広告のビジュアルを考える際には「認知の流暢さ(Cognitive Fluency)」を意識することも非常に重要です。先ほども「非流暢性」で説明しましたが、「流暢」とは「ひっかかりがない」、つまり「わかりやすい(瞬時に認知できる)」ということです。

その意味で概念メタファー理論は、認知の流暢さを作り出す手法の一つです。「高い=パワフル」「低い=気楽」という概念メタファー理論を利用し、「認知の流暢さ(わかりやすさ)」があるデザインを作り出せば、それぞれ消費者に受け入れられやすくなります。

【行動経済学】高級時計の見せ方は、垂直とナナメ、どちらが正解?人間の無意識に働きかける「概念メタファー」とは?_3
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「AのデザインとBのデザイン、どちらが好きですか?」

この質問はマーケティングリサーチの定番ですが、このときにただの好き嫌いではなく、身体的認知のクセを踏まえて検証することが大事です。

そうすれば、わかりやすく、自然に感じるデザインを選ぶことができます。またこうした行動経済学の知識を、プレゼンテーションの際に学術的なエビデンスとして示してもいいでしょう。


写真/shutterstoc

行動経済学が最強の学問である(SBクリエイティブ)
相良奈美香
行動経済学が最強の学問である(SBクリエイティブ)
2023/6/2
1,870円(税込)
368ページ
ISBN: 978-4815619503

ビジネスパーソンにとって、行動経済学ほど「イケてる学問」はない。現に世界のビジネス界では、その影響力はますます強まっている。

いま世界の名だたるトップ企業の間で、「行動経済学を学んだ人材」の争奪戦が、頻繁に繰り広げられている。1人の人材獲得に何千万円もの資金が動き、企業には「行動経済学チーム」までできている。

ビジネス界の要請を受けた世界のトップ大学が、次々と「行動経済学部」を新設し始めている。MBAのように、多くのビジネスパーソンが行動経済学を学びに集まっている。

もはや行動経済学は、「ビジネスパーソンが最も身につけるべき教養」となっているのだ。しかし、行動経済学は新しい学問であるが故に、これまで体系化されてこなかった。理論を一つ一つ丸暗記するしかなく、なかなか「本質」がつかめなかった。

そこで本書では、基礎知識をおさえた上で、「ナッジ理論」「システム1vsシステム2」「プロスペクト理論」から、「身体的認知」「アフェクト」「不確実性理論」「パワー・オブ・ビコーズ」まで、「主要理論」を初めて体系化するという、これまでにない手法で、行動経済学を解説する。


【目次】
■プロローグ いま世界のビジネスエリートがこぞって学ぶのが「行動経済学」
■ 序 章  本書といわゆる「行動経済学入門」の違い
■ 第1章  認知のクセ――脳の「認知のクセ」が人の意思決定に影響する
■ 第2章  状況――置かれた「状況」が人の意思決定に影響する
■ 第3章  感情――その時の「感情」が人の意思決定に影響する
■エピローグ あなたの「日常を取り巻く」行動経済学

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